経営者のための離婚相談 経営者・配偶者・会社の関係を整理!

経営者が離婚する場合の注意点

経営者の方が当事者となる離婚においては、いくつか、特有の問題があります。
この記事では、大きく3つに分けて解説してあります。

① 第一に、夫婦で資産を分ける「財産分与」についてです。経営者の離婚における財産分与の特殊性がかなり大きいので、以下では概要のみお伝えし、詳細は別記事にて取り上げています。

② 第二に、経営者の離婚では、単に「経営者-配偶者」間の関係を整理するだけではなく、「会社-配偶者」間の関係も整理する必要があることがまま、あります。具体的には、配偶者の方が会社の役員や従業員になっていたり、会社債務の保証人になっているケースです。この場合にどうすべきか、「経営者特有の問題」として取り上げてみました。

③ 第三に、事実上、経営者の方は収入が多いことも多く、それが、生活費の分担において特殊な問題を生じることがあります。これを、「収入が多いことによる問題」として取り上げてみました。

以下、それぞれについてみてみましょう。

経営者の財産分与

経営者の方にとって離婚時の財産の分け方は、間違いなく大きな関心事でしょう。
婚姻後に共同で形成された財産を分けることを(清算的)財産分与と言い、
①対象財産の特定→②対象財産の評価→③分与割合の確定→④分与方法の決定
という手順に沿って話は進みます。

経営者の方の場合、それぞれにおいて、
①:・(特に家族経営の場合に)事業用財産と個人の財産を区別する必要がある
  ・退職金は分与対象に入るのか、ゴルフ会員権はないか等をしっかり検討する必要がる
②:・非公開株式や高価な動産などを適切な方法で評価する必要がある
③:・いわゆる2分の1ルールを修正すべきか検討する必要がある
④:・不動産のほか、株式の分け方をしっかり取り決める必要がある
等々、難しい問題が生じます。

詳細は、こちらの記事をご覧ください。また、財産分与一般については、こちらの記事をご覧ください。

経営者特有の問題

財産分与のうち株式の分け方などもそうですが、経営者の方の場合、離婚でプライベートな関係に一区切りつけるだけでなく、会社の関係でも、配偶者の方との関係を清算しておく必要があります。

配偶者の方が会社の役員や従業員になっている場合

一つには、配偶者の方が会社の役員か従業員になっている場合が挙げられます。

以下、配偶者の方に「辞めてほしい」と思っているケースを念頭に解説します。役員か従業員かで問題の切り口が異なりますが、いずれにせよ、交渉が必要と言えるでしょう。

役員の場合

辞めてもらう方法は、
① 話し合って退任してもらう
② 株主総会を開いて解任する(会社法339条1項)
のどちらかです。

ただ、②の方法については、
・ 株主総会における議決権の過半数を掌握できる必要があること
・ 配偶者の方から損害賠償請求を受けるおそれがあること(会社法339条2項)
に留意が必要です。

したがって、まずは①の方法を目指しつつ、相手方の出方に応じて退職金等の交渉を行うのが穏当であるといえます。

従業員の場合

対して、従業員の場合、別途の解雇事由がない限り、強制的に辞めさせる方法は、残念ながらありません。経営者との離婚そのものが解雇事由に該当することはないからです。なお、これも残念ながら、部署異動や減給等も同様です。

したがって、話合いによらざるを得ません(この場合も、退職金等の条件が問題となるでしょう。)。戦略なしに「解雇だ!」と言っても労働紛争に発展して火が広がるだけですので、相手方の言い分や思惑を踏まえて、まずは落ち着いて交渉を行いましょう

会社債務の保証の問題

会社経営者の配偶者が会社債務の(連帯)保証人となっていることがしばしばあります。配偶者の方からすれば、離婚し、役員の地位も降りるなら当然、保証人の地位も降りたいと希望するでしょうが、金融機関側(債権者側)が何の代替手段もなしにそれを認めてくれることはなかなかないでしょう。

したがって、多くの場合、代わりの担保を立てることを検討することになります。

収入が多いことを理由とする問題

その他、会社経営者の方は事実上収入が多いことが多いため、問題になり得る点があります。それは、
「収入が2000万円を超えている場合、婚姻費用・養育費の算定方法が争いになる」
という点です。どういうことか、かいつまんで説明します。

婚姻費用・養育費と算定表

・婚姻費用とは、夫婦間で分担すべき家族の生活費のことをいい、
・養育費とは、未成熟子と離れて生活している親から、未成熟子とともに生活している親に支払われるべき、子どもの養育にかかる費用のことをいいます(詳細は、婚姻費用についてはこちらの記事、養育費についてはこちらの記事をご覧ください。)。

ざっくり言えば、前者は「夫婦間」で問題になる費用分担ですので、離婚までの生活費全般の問題であるのに対し、後者は、離婚してからの子どものための費用分担の問題です(離婚した以上、自分(親)の生活費は自分で稼ぐべきですので、子どものためのお金のみが問題となります。)。

婚姻費用も養育費も、収入が多い側が少ない側に対して分担して支払ってあげることになります。その分担額は、本来、(元)夫婦それぞれの可処分所得(基礎収入額)を割り出して、別居世帯それぞれの生活にかかる費用の割合を求めて…といった具合に一定の計算式・手順に則って順々に計算していくのですが、生活維持のための生命線である婚姻費用・養育費の額が少しでも早く算定されるよう、裁判実務では、収入等に応じ統計を加味して計算した結果を表の形にしたものを用いて、早期解決を図っています。この表が「算定表」と呼ばれるもので、相当に強い通用力を有しています(算定表についての詳細は、こちらの記事こちらの記事をご覧ください。)。

問題は、この算定表における基礎収入上限額が、2000万円になっていることです。

基礎収入が2000万円を超えている場合の考え方

Q:もともと計算式があるなら、算定表に載っていないとしても、式どおりに求めればいいだけなんじゃないの?

A:ごもっともですが、実はそう単純でもないのです。
前記のとおり、そもそも婚姻費用・養育費とは、世帯なり子どもなりの『生活費』でした。これが、基礎収入2000万を超え、2500万、3000万…となった場合に、果たして「生活費」は変わるのか、財産形成に回るだけであり、生活費は頭打ちになるとみるべきではないか、という疑問があるのです。

そのため、ここは、考え方が分かれています(裁判体によっても違います。)。一つは、基礎収入が2000万円を超えても計算式に当てはめて婚姻費用・養育費を求めていく考え方。もう一つは、算定表記載の婚姻費用・養育費が上限となり、それ以上の請求は認めないとい打ち止め方式です

経営者の方の立場からは、打ち止め方式を主張したいということになるでしょう。その場合、生活の実態も踏まえながら、当該事案で打ち止め方式が採用されるべき理由を説得的に述べていくことが望ましいといえます。

まとめ

以上、経営者の方の離婚の問題を取り上げてみました。

時々、離婚のことを法的には簡単な紛争類型だと誤解していらっしゃる方もいらっしゃいますが、そもそも離婚は事案ごとの個別事情に応じてオーダーメイドで主張を組み立てる必要があり、容易なものではありません。会社経営者の方の離婚は、特にそれが顕著です。ご夫婦のみならず会社との関係は事案に応じて千差万別です。他方、当事者の方にとっては、純粋にプライベートな問題ではなく会社の将来のことも同時に考えなければならないことから、非常にストレスフルな状況であると思います。

お困りの場合は、ぜひ、専門家弁護士の活用をご検討ください。

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