過去の不倫による慰謝料請求は可能?慰謝料請求権の時効について

慰謝料請求には、一定期間の経過によって相手がそのことを主張(援用)すると請求権が消滅する「時効」が定められています。これは不倫による慰謝料請求の場合も同様です。通常、不倫による慰謝料請求を検討するのであれば、すぐに行動を起こす方が多いのですが、一時は請求を躊躇ったり、動揺のあまりそこまで頭が回らなかったりと、時間が経ってしまうケースは現実にもよくあります。

では、すでに終わった過去の不倫による慰謝料請求は、今からでも可能なのでしょうか?時効を過ぎてしまうと、慰謝料請求自体、もう不可能となってしまうのでしょうか?

今回は、そんな疑問を解決させるべく、慰謝料請求の時効について詳しく解説していきます。

離婚・不倫の際の慰謝料請求について

離婚・不倫の際の慰謝料請求は、慰謝料請求ができるケースとできないケースがあります。

特に離婚を伴うケースで、不倫以外の慰謝料を請求したい際には要注意です。

慰謝料請求ができるケース

離婚・不倫の際に慰謝料請求ができるのは、主に下記に該当する場合です。

  • ・不貞行為をされた
  • ・悪意の遺棄をされた
  • ・DV(ドメスティック・バイオレンス)をされた

不貞行為をされた

配偶者以外と肉体関係を持つこと、つまりは不倫です。

不倫があった場合は、離婚する・しないに関係なく、慰謝料請求ができます。また、不倫は共同不法行為であるため、配偶者だけでなく不倫相手にも慰謝料請求することが可能です。

悪意の遺棄をされた

夫婦には同居・協力・扶助の義務があります。この義務を守らずに、一方的に別居をする、生活費を渡さないなどの場合は、悪意の遺棄に該当し、離婚時に慰謝料請求ができます。

DV(ドメスティック・バイオレンス)をされた

相手に身体的、精神的、性的、社会的暴力を与える行為がDVです。いわゆるモラハラも、DVに含まれます。婚姻期間中にDVがあった場合は、離婚時に慰謝料請求ができます。

慰謝料請求ができないケース

離婚・不倫の際に慰謝料請求ができないのは、主に下記に該当する場合です。

  • ・第三者に説明できるだけの証拠がない
  • ・不倫相手に離婚慰謝料は請求できない
  • ・時効期間を経過してしまっている

第三者に説明できるだけの証拠がない

慰謝料請求をする際、相手が素直に支払ってくれれば良いのですが、そうでない場合は最終的には調停や裁判の手続きを踏むしかありません。そうなってくると、どうしても必要になるのが第三者に説明できるだけの証拠です。証拠がない場合は、慰謝料請求の難易度が上がってしまうばかりか、名誉棄損等の側面から請求自体難しいケースもあります。

不倫相手に離婚慰謝料は請求できない

不倫相手に請求できるのは、あくまでも不倫慰謝料のみです。悪意の遺棄やDVが理由で離婚をする場合の、離婚慰謝料については不倫相手に請求できない点に注意しましょう。

ただし、離婚の原因に不倫が含まれているのであれば、離婚しない場合の慰謝料より増額して請求が可能です。不倫慰謝料の金額については弁護士への相談を強くお勧めします。

時効期間を経過してしまっている

慰謝料請求の時効期間が経過してしまうと、相手が時効を主張(援用)すると請求権が消滅します。厳密にいえば請求できないわけではありませんが、相手が時効を主張(援用)すると支払い義務が消滅するため、回収は難しいのが現実です。

慰謝料請求における時効

慰謝料請求とは、正確には、「不法行為による損害賠償請求」のことを言います。

そして、不法行為による損害賠償請求権の時効は、「損害及び加害者を知ったときから3年」、「不法行為の時から20年」と民法にて定められています。

以前まで、20年の部分は除斥期間と言ったのですが、現在は民法が改正され、どちらも時効と明記されることになりました。

離婚・不倫における慰謝料請求権の時効

上記の時効については、離婚・不倫における慰謝料請求の時効にそのまま当てはめられます。不倫慰謝料の場合は、「不倫及び不倫相手を知った時から3年」、「不倫があった時から20年」となります。離婚慰謝料の場合は少し特殊で、「悪意の遺棄などをされたときから3年(離婚原因慰謝料)」も当てはまるのですが、「離婚成立から3年(離婚自体慰謝料)」が請求権の時効となります。離婚原因慰謝料と離婚自体慰謝料については、実務上は包括的に取り扱うことが多いため、離婚成立から3年と覚えておけば十分です。

ケース別の時効の計算方法

それでは、不倫におけるケース別の時効の計算方法についても見ていきましょう。

時効の起算点(いつから時効期間が開始するのか)というのは、何が損害で、誰に請求するかによっても異なります。下記にて詳しくご説明します。

ケース①不倫で受けた精神的苦痛を配偶者に請求する

不倫で受けた精神的苦痛を配偶者に請求したい場合、時効の起算点は不倫を知った時となります。ここでの不倫を知った時というのは、疑わしい段階を含めるのではなく、あくまでも不倫の事実が確定したタイミングと考えてもらえれば問題ありません。たとえば、配偶者が不倫の事実を認めた日、不倫が確定的である証拠を入手した日、が時効の起算点となります。よって、そこから3年間が不倫慰謝料請求の期限となります。

ケース②不倫で受けた精神的苦痛を不倫相手に請求する

不倫で受けた精神的苦痛を不倫相手に請求したい場合、時効の起算点は不倫及び不倫相手を知った時となります。ただし、請求相手が不倫相手の場合、不倫及び不倫相手を知った時というのは、不倫相手に対して慰謝料請求が可能になった時、という意味になります。相手の素性がわからない状態では、不倫及び不倫相手を知った時とは言えません。よって、慰謝料請求する上で最低限必要となってくる、相手の住所や氏名を知ってから3年間が不倫慰謝料請求の期限となります。

時効が完成した場合の慰謝料請求は可能か?

時効が完成した場合であっても、慰謝料請求するだけであれば可能です。

もちろん時効を相手が主張(援用)すると慰謝料を支払う義務は消滅するため、あくまでも任意で支払いに応じてもらうことになります。とはいえ、すでに時効が完成している事実について、いちいち相手に伝える必要はありません。後になって「時効だとは知らなかったから無効だ」と相手に返金を求められても、これに応じる必要はありません。

ただし、すでに時効が完成していることを知りながら、しつこく請求をしたり、脅すような発言をしていたりすると、刑事罰に問われる恐れもあるため注意しましょう。

時効前に慰謝料請求を行う場合の流れ

では、時効前に慰謝料請求を行う場合の流れについても見ていきましょう。

今回は、不倫相手に対して慰謝料請求を行う場合の流れです。

内容証明郵便の送付

まずは口頭で慰謝料請求をするのも良いのですが、相手が素直に応じてくれそうにない場合は、最初から内容証明郵便を送付してしまうのが効果的です。

また、この内容証明郵便による請求には、時効の完成を6か月間遅らせる効力もあります。時効完成が迫っている場合に非常に効果的な方法です。

示談交渉をする

不倫相手が不倫の事実を認めているのであれば、相手の経済的状況も見ながら、示談交渉によって慰謝料の金額を取り決めることになります。無事に納得のいく金額が決まったら、後のトラブルを防止する意味でも、示談書をしっかりと作成しておきましょう。

裁判を起こす

不倫相手が不倫の事実を認めない、もしくは、慰謝料の金額について争いがあるといった場合、次は裁判を起こすしかありません。

なお、裁判中であっても裁判外で和解することは可能であるため、引き続き示談交渉を継続することもあります。裁判ともなれば、相手の負担も大きくなってくることから、いっそ訴訟提起してしまったほうが、早く解決するケースも現実にはよくあります。

不倫による慰謝料請求を行う際には弁護士に相談を

不倫による慰謝料請求を行う際には、弁護士に相談することを強くお勧めします。

特に、時効完成が迫っている場合は、弁護士に依頼することで確実な回避が可能です。また、配偶者や不倫相手が素直に支払いに応じてくれないケースや、不倫そのものを否定しているケースでは、慰謝料請求の難易度はぐっと高くなります。個人で請求を続けるのは、肉体的・精神的負担は多大なものです。弁護士であれば、あなたに代わって請求・交渉をすることができます。弁護士法人西村綜合法律事務所では、初回相談は無料となっていますので、どうぞお気軽にお問い合わせいただけますと幸いです。



監修者:弁護士法人西村綜合法律事務所 代表弁護士 西村啓聡
[経歴]
東京大学卒業
第2東京弁護士会登録、岡山弁護士会登録

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