離婚に向けて別居をお考えの方へ
離婚に向けて別居をする場合も,何ら準備なく別居を開始してしまうと,離婚の協議等を行う際に不利になってしまう可能性があります。
そこで,今回は別居を始めるにあたり注意すべき点をご説明いたします。
別居すべきケース
そもそも,離婚をするにあたり別居は必要不可欠のものではありません。
もっとも,以下のような場合には配偶者との別居を開始した方が良いでしょう。
DVやモラハラを受けている場合
配偶者が離婚を拒否している場合
配偶者と同居することが精神的負担となっている場合
DVやモラハラを受けている場合
配偶者からDVを受けている場合,自身の身の安全を守るため,早急に別居を開始した方が良いでしょう。
また,暴力までは受けていなくても,配偶者からモラハラを受けたり,または精神的に虐待されている場合には,配偶者と対等に離婚の話し合いが出来ない恐れが高いため別居した上で離婚の話し合いを進めることが良いでしょう。
配偶者が離婚を拒否している場合
原則として,離婚は当事者の合意によるか法定の離婚原因(民法770条1項各号)がなければすることは出来ません。そのため,配偶者が離婚を拒否している場合は,法定の離婚原因が必要となります。
法定の離婚原因には以下のものがあります。
①配偶者に不貞行為があったこと
②配偶者から悪意で遺棄されたこと
③配偶者の生死が3年以上明らかでないこと
④配偶者が強度の精神病にかかり,回復の見込みがないこと
⑤その他婚姻を継続し難い重大な事由があること
①~④の離婚原因が存在しない場合,⑤の事由の有無が離婚の可否を分けることになります。配偶者との別居を開始し,別居期間が相当長期にわたる場合,婚姻関係が破綻しているとして⑤の事由が認められやすくなります。
そのため,配偶者が離婚を拒否している場合は,別居を開始し,別居期間を積むことが重要といえます。
配偶者と同居することが精神的負担となっている場合
配偶者からDVやモラハラを受けている場合でなくても,夫婦仲が悪くなると,精神的に疲弊してしまうこともあるでしょう。そのような状況下では,夫婦双方冷静に離婚の話し合いを進めることは出来ません。
したがって,配偶者と同居することが精神的に負担となっている場合には,別居することをおすすめします。
別居するメリット
では、別居するメリットにはどのようなものが挙げられるでしょうか。
例えば下記の事項が考えられます。
離婚が認められやすくなる
上述したとおり,別居を開始し,別居期間が相当長期にわたる場合,婚姻関係が破綻しているとして離婚が認められやすくなります。
配偶者の影響を受けずに離婚準備が進められる
配偶者と同じ空間で過ごしていると,配偶者からの言動によって冷静に離婚について考え、判断することが難しい場合があります。また,配偶者の目を気にして離婚準備をなかなか進めることが出来なくなってしまいます。
別居をし,配偶者と離れることは,離婚を冷静に考えるためには重要です。
相手に離婚の危機感を伝えられる
別居をすることで,配偶者に対し離婚の意思が固いことを示すことが出来,配偶者にも離婚について真剣に考えてもらうきっかけとなるというメリットがあります。
別居するデメリット
逆に、別居するデメリットを見ていきましょう。下記事項が例として挙げられます。
復縁が難しくなる
別居を開始することで,配偶者に対して離婚の意思が固いと示すことになります。
そのため,別居を受けて配偶者側も離婚の意思を固める可能性があります。
そうすると,その後,配偶者と復縁をしたいと思っても,配偶者側が復縁に応じてくれなくなる可能性はあります。
証拠の確保が困難になる
配偶者と別居をすると,配偶者の身の回りで証拠を収集することは困難になります。
そのため,別居前にしっかりと証拠を収集しておかなければ,後々,財産分与や慰謝料を求めたいと思っても十分な証拠がなく不利になる可能性があります。
有責配偶者とされる可能性がある
何ら正当な理由がないにもかかわらず別居を開始すると,法定の離婚原因の一つである「悪意の遺棄」にあたる可能性があります。
その場合,別居を開始した側が有責配偶者となり,慰謝料を求められてしまう可能性があります。
別居に向けた準備
別居後,離婚の話し合いを有利に進めるために,別居を開始するにあたっては以下のような準備をしておきましょう。
証拠の確保
離婚の話を進めるにあたり,配偶者が離婚原因やその責任の所在について争ってくる可能性があるため,婚姻生活において配偶者からされた言動については,写真や動画,日記等を付けるなどして証拠として確保しておきましょう。
財産の把握
婚姻費用や養育費は基本的に夫婦双方の収入を基に算定されます。
そのため,配偶者の収入資料(源泉徴収票や確定申告書,所得証明書など)は写しを取っておきましょう。
また,配偶者の財産を把握できていないと財産分与の際に財産を隠されてしまう可能性もあります。
そのため,預貯金や保険,株式など配偶者の財産については,通帳や保険証書等のコピーを取っておきましょう。
別居期間を5年目安で考える
婚姻関係が破綻しているとして離婚が認められる別居期間はケースバイケースではありますが,大体5年を目安として考えておくと良いでしょう。
もっとも,自身が有責配偶者の場合にはこの限りではありません。
子どもがいる場合の別居
子どもを配偶者の下に残し,別々に暮らし始めてしまうと,配偶者の下での監護実績が積み重ねられていくことになるので,その後親権を取得したいと考えても不利になってしまいます。
もっとも,配偶者に無断で子どもを連れて出てしまうと,子どもの連れ去りとみなされてしまう恐れもあるので,配偶者と話し合いが出来るのであれば,離婚するまでどちらが子どもの監護者となるか,きちんと話し合いましょう。
話合いができない場合は,家庭裁判所で監護者指定調停や審判を行うことも検討しましょう。
別居後の生活費について
別居後も配偶者に対して自身や子どもの生活費(婚姻費用)を求めることは可能です。
配偶者に対して生活費の支払いを求めても応じてくれない場合は,家庭裁判所に婚姻費用分担調停や審判を申立てましょう。
まとめ
以上別居を開始するにあたっては,事前の準備が重要となります。
後々離婚の条件を決める際に有利に話を進めることが出来るよう,しっかりと準備をしておきましょう。
ご自身の場合に,どのような証拠を収集しておけば良いか分からないという方は一度弁護士にご相談されることをおすすめします。
監修者:弁護士法人西村綜合法律事務所 代表弁護士 西村啓聡 [経歴] ![]() 東京大学卒業 第2東京弁護士会登録、岡山弁護士会登録 [ご相談者の皆様へ] 離婚のご相談は,皆様にとって人生の岐路となる重大な問題です。数多くの離婚問題を解決してきた経験をもとに,皆さまにとって最善の方法を提案させていただきます。 |
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