離婚の際に慰謝料請求できる?その方法や相場は?慰謝料請求できないケースは?

離婚をするとき、慰謝料を請求できるということを漠然と知っている方は多いでしょう。しかし、実際にどのような場合に慰謝料を請求できるのか,どのように慰謝料を請求すれば良いのか分からないという方は多いのではないでしょうか。そこで今回は,離婚時の慰謝料について説明します。慰謝料を請求できるかどうかを離婚の理由ごとに紹介し、請求時にどのようなものが必要になるか、請求の流れについて詳しくご案内します。

離婚慰謝料とは

離婚慰謝料は,一方の配偶者が離婚の原因を作り,そのことによって離婚という事態を招いたことで他方の配偶者が被った精神的苦痛を賠償するために支払われるものをいいます。

民法709条において故意または過失によって他人の権利や法律上保護された利益を侵害した者は,これによって生じた損害を賠償しなければならないことが定められています。この内容には財産的損害も含まれますが、離婚において賠償されるべき損害は、主に精神的苦痛(精神的損害)が該当します。

離婚慰謝料が認められる離婚事由

夫(又は妻)が以下のような行為をして離婚の原因を作った場合,離婚慰謝料が認められる可能性があります。

①浮気・不倫

②DV(家庭内暴力)

③モラハラ(精神的虐待)

④悪意の遺棄

⑤セックスレス

離婚慰謝料が認めらない離婚事由

逆に,離婚の原因が以下のような場合には,離婚慰謝料は認められない可能性があります。

①性格の不一致

②価値観の相違

③双方が有責配偶者であるケース

慰謝料算定の考慮要素

離婚慰謝料は,離婚原因について責任がない者が離婚せざるを得なくなったことにより受ける精神的苦痛を慰謝するものです。その金額は,離婚の原因や子どもなどの事情を総合的に考慮して算定されます。

具体的には,下記のような情報をもとに金額が決定されます。
①婚姻関係破綻に至る経緯
②破綻原因に関する夫婦双方の言動及び責任の程度
③破綻までの婚姻生活の状況
④婚姻期間
⑤離婚後の経済的状況
⑥子どもに対する影響の有無
⑦子どもの年齢

ケース別 離婚慰謝料の相場

離婚慰謝料は平均的に300万円以下の金額になることが多いです。しかし、個別性が高いので,その額は一概に判断することはできず,事案に応じて都度算定されることになります。慰謝料を増額する要素としては,以下のようなものがあります。

①浮気・不倫の場合

不貞期間が長く,反省の態度が見られないような場合には不貞の態様が悪質であると判断され,増額となる可能性があります。

②DV(家庭内暴力)の場合

DVの態様や期間の長さ,DVを受けた夫(又は妻)が怪我や後遺症を負った場合は増額となる可能性があります。

③モラハラ(精神的虐待)の場合

モラハラの態様や期間の長さ,モラハラを受けた夫(又は妻)が精神障害を発症した場合、増額となる可能性があります。

④悪意の遺棄の場合

正当な理由なく別居を開始し,別居期間が相当長期にわたる場合や,配偶者に対して生活費を全く渡さないような場合は増額となる可能性があります。

⑤セックスレスの場合

正当な理由なく性交渉を拒み,そうした状況が相当長期にわたる場合は増額となる可能性があります。

慰謝料請求に必要なもの

離婚時に慰謝料を請求するためには、証拠と相手の支払い能力が必要です。それぞれどのようなものかを解説します。

①証拠

夫(又は妻)が原因で離婚をする、という事実を明らかにするために、証拠が必要です。例えば,離婚原因が夫(又は妻)の不貞である場合,録音録画データや写真,メールやSNSでのやり取り,日記などが証拠として考えられます。事前に収集し,確保しておきましょう。

②相手の支払い能力に関する情報

当事者間で慰謝料額を定めても,相手方に支払能力がなければ,慰謝料が現実に支払われない恐れがあります。そのため、慰謝料額を定めるにあたっては相手方の支払能力も考慮して,現実的なラインで金額を定めることをおすすめします。

相手方の支払い能力に関する情報を集める方法としては,相手方の収入資料(源泉徴収票や所得証明書など)や預貯金残高が分かる通帳のコピーなどを取っておきましょう。

離婚慰謝料の請求方法

離婚協議(話し合い)

夫(又は妻)に対し慰謝料の支払いを求め,その支払いに当該夫(又は妻)が応じるようであれば,話し合いによる解決が可能です。

離婚調停または民事訴訟

当事者間での話し合いがまとまらなければ,家庭裁判所に離婚調停を申し立てて,調停の中で相手方に対して慰謝料の支払いを求めていくことが考えられます。もっとも,離婚調停の中でも話し合いがまとまらなければ,裁判という方法で慰謝料を求めていくことになります。

離婚慰謝料も不法行為に基づく損害賠償請求なので,地方裁判所や簡易裁判所に訴えを提起して請求することが可能です。

裁判離婚

離婚協議や離婚調停で慰謝料の合意が取れなかった場合は、裁判で請求することになります。離婚訴訟において慰謝料を請求する方法としては,以下の2つの方法があります。
(1)離婚訴訟の関連請求として請求する方法
(2)離婚訴訟において財産分与として請求する方法

(2)については,財産分与として考慮できるのはあくまで離婚慰謝料のみであり,婚姻期間中に配偶者から暴力などを受けていたとしても,それが離婚原因となるのでなければ,財産分与の考慮要素にはならないという点に注意しましょう。

離婚後でも慰謝料請求できる?

不法行為による損害賠償の請求権は,被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から3年経過したときや不法行為の時から20年経過したときに時効によって消滅してしまいます(民法724条)。

①離婚そのものによる慰謝料請求

離婚に至った精神的苦痛という「損害」を「知った時」とは、離婚が成立した時と考えられます。したがって,離婚慰謝料は,離婚と同時に請求しなくても離婚成立後3年以内であれば請求することが可能です。

②離婚原因による慰謝料請求

離婚に至った原因行為(不貞など)から生じる精神的な苦痛に対する慰謝料を夫(又は妻)に請求する場合は,当該原因行為(不貞など)の事実を知った時から3年以内であれば請求することが可能です。

慰謝料以外にもらえるお金

離婚の際にもらえるお金は慰謝料だけではありません。離婚が成立するまでの期間に支払われる費用や離婚後に請求できる費用もあるため覚えておきましょう。

財産分与

婚姻期間中に夫婦で形成した財産があれば,財産分与を求めることが可能です。

財産分与は離婚成立前だけではなく離婚後でも夫(又は妻)に請求できます。しかし、もし当事者間の協議によって財産分与ができず,裁判所に審理判断をしてもらう場合は、離婚成立時点から2年以内に家庭裁判所に申立てをする必要があります(民法768条2項但書)。

婚姻費用

婚姻費用とは,夫婦が共同生活を営むために必要な費用,すなわち,夫婦の生活費をいいます。離婚成立までの間,収入の少ない一方の配偶者は他方の配偶者に対して婚姻費用の支払を求めることができます。

婚姻費用支払いの開始時期は、夫婦の一方が扶養を必要とする状態になったとき(通常は別居時)ですが,実務上は,支払いの請求があったとき(通常は婚姻費用分担調停又は審判の申立時)とされることが多いです。

婚姻費用支払いの終了時期は、離婚時もしくは別居が解消され,再び夫婦が同居して婚姻生活を営むようになったときです。

養育費

未成年の子どもが生活するために必要な費用を養育費といいます。親は子どもに対して扶養義務を負っているため,離婚後も,親である限り養育費を支払わなければなりません。

夫婦が婚姻している間は,子の生活費は婚姻費用内に含まれます。養育費は夫婦が離婚した後に支払われる費用です。

養育費支払いの開始時期は、婚姻費用同様,実務上支払いの請求があったとき(通常は養育費分担調停又は審判の申立時)とされます。終了時期は、子が成人に達するまでとされることが多いです。

なお,養育費の取り決めを行う際,支払終期を「成人に達するまで」とすることが多いですが,民法改正により2022年に成人年齢が20歳から18歳に引き下げられるため,今後,養育費の取り決めを行う場合には,養育費の支払い終期を「〇〇歳まで」と明示し,後に当事者間で争いが生じないようにすることが必要です。

まとめ

離婚に際しては金銭を巡って当事者間で争いになることが多くあります。離婚後も人生や生活は続きますから,離婚後の生活がより良いものになるよう,離婚の条件は慎重に検討しなければなりません。ただ,どのような条件が妥当であるのか,ご自身だけでは判断に迷われることもあるのではないでしょうか。そのような場合には,自分一人で悩まれず,弁護士に相談することをおすすめします。

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