夫・妻別の主な離婚事由

平成30年度に全国の家庭裁判所に申し立てられた婚姻関係の調停事件は63,902件あり、妻側からの申立てが46,756件、夫側からの申立てが17,146件となっています。
今回は、これら事件の申し立ての動機から、夫・妻別に離婚理由の上位10位までをご紹介します。(なお、申立ての動機は、申立人のいう動機のうち主なものを3個まで挙げる方法で調査重複集計しています。)
(出典:平成30年度司法統計 家事事件編)

 

夫側からの離婚理由トップ10

1位 性格が合わない 10,438人
2位 精神的虐待 3,370人
3位 異性関係 2,373人
4位 家族や親族と折り合いが悪い 2,294人
5位 性的不調和 2,141人
6位 浪費する 2,030人
7位 同居に応じない 1,597人
8位 暴力を振るう 1,502人
9位 家庭を捨てて省みない 887人
10位 生活費を渡さない 744人

 

妻側からの離婚理由トップ10

1位 性格が合わない 18,268人
2位 生活費を渡さない 13,725人
3位 精神的虐待 11,801人
4位 暴力を振るう 9,745人
5位 異性関係 7,378人
6位 浪費する 4,686人
7位 家庭を捨てて省みない 3,600人
8位 性的不調和 3,293人
9位 家族や親族と折り合いが悪い 3,171人
10位 酒を飲み過ぎる 2,752人

 

離婚理由第1位:性格の不一致

上記ランキングを見ると、夫・妻ともに「性格が合わない」が離婚理由として圧倒的に多く、第1位となっています。

「性格が合わない」という理由は、平成30年度から過去5年遡っても夫・妻ともに離婚理由の第1位となっていますが、離婚の決定的な理由がない場合や、他に離婚理由がある場合でも世間体を気にして性格の不一致を挙げる夫婦も多くいることから離婚理由として高い位置にあるものと考えられます。
もっとも、「性格が合わない」ことのみを理由に離婚するのは困難です。夫婦間で離婚の合意が出来ずに裁判で離婚が争われた場合には、性格の不一致により婚姻関係を継続することが難しいことを証明しなければなりません

 

様々なDVについて

次に、離婚理由第2位は、夫側で「精神的虐待」、妻側で「生活費を渡さない」となっています。勝手な都合で配偶者に生活費を渡さないことは経済的DVにあたる行為で、離婚事由となりえます。

また、「精神的虐待」は妻側の離婚理由でも第3位に入っていますが、これもDVの一種にあたります。
精神的虐待にはモラル・ハラスメントの事例が多く含まれています。
昨今、「モラハラ」という言葉を耳にしたことがある方も多いと思いますが、「モラル・ハラスメント」とは、言葉や態度による嫌がらせを言います。モラル・ハラスメントの特徴は、単に相手が口うるさいだけなのか線引きが難しく、精神的虐待を受けていると周囲から気付いてもらいにくい点にあります。また、加害者本人も「相手のことを思って注意している」「自分が正しい」と信じ、自分が虐待を行っているという意識がない傾向にあります。

⇒モラハラの詳しい内容については、こちらの記事もご覧下さい。

円満な夫婦関係を維持するためだけでなく自分自身が加害者にならないためにも、夫婦ともに、自身のパートナーに対する言動を振り返る機会を持つと良いかもしれません。

 

異性関係

離婚理由第3位は、夫側で「異性関係」、妻側で「精神的虐待」となっています。
夫側の離婚理由上位に「異性関係」が入っているのに対し、妻側の離婚理由の上位に「異性関係」が入っていないことを意外だと思われた方も多いのではないでしょうか。

異性関係について、配偶者の不貞行為が認められれば法定離婚原因にあたりますが、不貞の立証は必ずしも容易ではないので、証拠となるものがある場合には残しておきましょう。

 

近年の傾向

近年、「異性関係」や「家族や親族と折り合いが悪い」ことを理由とする離婚は減少傾向にあります。
また、「暴力を振るう」という離婚理由は未だ数自体は多いですが減少傾向にあり、代わって「精神的虐待」や「生活費を渡さない」といった理由が増加傾向にあります。

身体に対する暴力だけでなく、精神的暴力や経済的暴力もDVにあたり、離婚事由となるという認識を持つことが重要です。

 

円満な夫婦関係を築くためにも、今回の離婚理由ランキングを参考にしてみてください。

 



監修者:弁護士法人西村綜合法律事務所 代表弁護士 西村啓聡
[経歴]
東京大学卒業
第2東京弁護士会登録、岡山弁護士会登録

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