離婚の手続きについて

今すぐにでも離婚したいと考えていても、何をどうすればいいのか分からずに悩んでいるいる人も多いのではないでしょうか。

離婚する原因は人それぞれですが、現実的に離婚を視野に入れている場合は必要な手続きや準備について把握しておくことが重要です。

離婚を決心しても行動に移せないのは「進め方が分からず面倒だ…」「離婚で損をすることがあるのでは?」など手続きについて知らないことが多く不安を感じるためです。

この記事では、離婚を進められずに悩んでいる人に向け離婚の種類を紹介したうえで手続きの流れや必要書類などを解説します。

 

手続きのほか、男女別のよくあるご相談や離婚の進め方についてもぜひご覧ください。

離婚の種類と流れ

別れたいのに離婚に向けた行動ができなかったり、ストレスを感じたりするのは、離婚の方法やどう進めるべきかの流れが不透明であるからではないでしょうか。

ここでは離婚の種類と流れを解説します。

協議離婚

協議離婚とは夫婦で話し合って離婚を決定し、役所に届出をすることで成立する離婚方法です。
もっとも一般的な方法で、2015年の人口動態調査によると、9割近くの夫婦が「協議離婚」で離婚を成立させています。
協議離婚の場合、手続き方法は簡単で特に決まりはなく、夫婦間の合意があれば「離婚届」を提出することで離婚は成立します。

協議離婚の手続き方法は以下のとおりです。

1.市町村の役所から離婚届を取得、またはインターネットでダウンロード
2.必要事項の記入、署名や捺印
3.本籍地か住所地の役所の戸籍課に提出

協議離婚では印紙などの費用もかかりません。提出は自分で持参しても代理人でも可能です。郵送でも受理されます。

調停離婚

調停離婚とは夫婦間で話がまとまらない場合、離婚合意を目的に家庭裁判所の調停委員を第三者として交え、双方の意思調整を試みる制度です。

離婚にはお金の問題や別れたくても相手が応じないなど双方の意見が分かれるケースもあります。調停により互いの意見を尊重しつつ条件を調整し合意を得られるようにするのです。

調停離婚は以下のような流れで行われます。

1.家庭裁判所への調停申し立て
2.双方へ調停委員による言い分などの聞き取り
3.双方の条件や意見の調整を試みる
4.双方が合意したら調停調書が作成され離婚成立(離婚届は別途提出が必要)

また、不成立となった場合は審判離婚か裁判離婚へ移行します。

期間は平均で4カ月以上(回数は6~10回)が一般的です。1回の所要時間は2~3時間程度で夫婦別々に行われます。また印紙など諸費用がかかり、弁護士へ調停を依頼するなら弁護士費用も必要です。

審判離婚

審判離婚とは調停の内容を踏まえ不成立にするのは不合理と判断された場合や、調停最終期日に当事者が裁判所の呼び出しに応じないなどの理由で調停が成立できない場合に裁判官の職権で離婚の成立や条件を決定することです。

しかし、2週間以内に当事者から異議申し立てがあると審判の効力は失われるため、日本における離婚案件ではほぼ利用されることはありません。

離婚裁判

裁判なので判決が出れば離婚は成立します。しかし協議や調停ではどのような理由でも離婚できたのに対し、裁判離婚では配偶者の不貞行為など法律で定められた離婚理由が必要です。

裁判離婚の流れは以下のようになります。

1.裁判所へ離婚訴訟申し立て
2.双方の主張と立証、および尋問
3.裁判所から和解案の提示。合意すれば離婚が成立し慰謝料なども決定
4.和解が不成立の場合、裁判所が離婚可否や慰謝料などを判決

判決に不服がある場合は2週間以内であれば控訴が可能です。裁判離婚には印紙などの諸費用や弁護士費用がかかります。

離婚前に準備しておきたいこと

離婚が成立すると収入や住居など生活が一変するため、さまざまな面で対策が必要です。ここでは離婚前に準備すべきことを説明します。

生命保険の受取人を変更しておく

生命保険の受取人を配偶者にしている人は多いのではないでしょうか。そのまま離婚した場合、保険金は離婚した元配偶者が受け取ることになるため、離婚を決めたら親族などへ受取人を移しておくと良いでしょう。

離婚後の生活設計をたてる

配偶者の扶養に入っている場合は離婚後の収入源の確保が必要です。早く離婚したいからといってこれまでの蓄えだけで収入源が無いまま離婚するのは高いリスクが伴います。離婚前に正社員やアルバイト、パートとして働く先を見つけておくなど安定した収入源を確保しましょう。

また、離婚後の住居もあらかじめ用意しておきましょう。実家などすぐに移り住める場所があれば問題ありませんが、引っ越しが必要な場合は早めに住居を決めておく必要があります。引っ越し繁忙期になると費用が余計にかかるので注意が必要です。

離婚協議書を作成しておく

財産分与や慰謝料、養育費など、話し合って決めただけでは相手が約束通りに行動するとは限りません。また、第三者への相談や法的に請求しても記録がなければ対応が難しくなってしまいます。

予定していたお金が入らなければ子育てや生活への影響も少なくありません。
離婚前に協議した取り決めは「離婚協議書」として公正役場で公正証書にしておくのが良いでしょう。
また、トラブルを避けるため確実な離婚協議書を作成するなら弁護士への依頼をおすすめします。

離婚協議書とは?

離婚協議書とは、離婚時や離婚後の取り決めなどをまとめた書類です。書類にしておくことでトラブルを避ける目的があります。

書類に記載する主な内容は以下の通りです。

離婚合意について

協議離婚に合意した旨と離婚協議書を取り交わしたことを記載します。

親権について

子どもの名前、誰が親権を所有するか、そしていつまで(何歳)養育するのかなどを記載します。

養育費について

養育費の有無、支払い金額、支払い期間、支払い方法などを記載します。

慰謝料について

精神的苦痛を受けた場合、慰謝料を受け取るケースもあります。
記載項目は慰謝料の有無、支払い金額、支払期日、一括や分割などの支払い方法、どちらが振込手数料を負担するかなどです。

財産分与について

結婚生活で築いた財産を夫婦それぞれの貢献度に応じて分けることを財産分与と言います。対象となる財産は現金、退職金、年金、不動産、有価証券、家具、美術品や宝飾品などです。

離婚協議書には対象財産、譲り渡すもの、支払い期限、一括や分割などの支払い方法などを記載します。

子どもとの面接について

離婚後、子どもはどちらかの親と離れて生活することになります。これは離れて暮らす親が、子どもと面会する条件を決める内容です。

記載内容は面会の頻度、時間、面会方法や条件、連絡の可否などです。

年金分割について

結婚生活中に支払った厚生年金保険料に限り、支払い実績を夫婦で分割することができます。ここでは年金分割に合意しているという旨と夫婦それぞれの生年月日、基礎年金番号を記載します。

公正証書にするか否か

夫婦の取り決めを記載しただけの離婚協議書は法的には効力を持たない書類です。そのため、トラブルを防ぐべく離婚協議書を公正証書にすることについて双方が合意しているかを記載します。

清算条項について

離婚協議書に記載された内容以外、支払いなどは生じないことを互いに確認した旨を記載します。

離婚届を提出するときに必要な書類

夫婦の話し合いによる協議離婚であれば、本籍地か住所地の役所の戸籍課に離婚届を提出するだけで離婚が成立します。

しかし、注意すべきは協議離婚であっても離婚には証人が必要だということです。離婚届には証人欄が設けられているので、20歳以上の証人2人の署名と捺印も必要になります。

また役所に提出する際の注意点として本人確認書類の提示を求められるケースもあるので、念のため運転免許証やパスポートなど身分証明書を持参しましょう。

離婚届は市町村の役所へ取得しにいくか、各市町村のホームページなどインターネット経由でダウンロードできます。

夫婦で協議しても互いの条件を譲らず離婚が成立しないケースも少なくなりません。そうなると調停離婚へ移行することになります。

調停離婚をするときに必要な書類と手続きの方法

調停離婚をする場合、必要書類の準備、家庭裁判所への申し立ての手順で進めます。
必要書類は以下の通りです。

・申立人の戸籍謄本と印鑑
・夫婦関係調整調停申立書

申立人と相手方の情報、申し立ての趣旨と理由などを記載
・進行に関する照会回答書
相手方が申し立てすることを把握しているか、裁判所の呼び出しに応じるかなどを記載する書類
・事情説明書
家族構成、それぞれの年収や財産、調停で対立しそうな事案などを記載する書類
※申立書、回答書、事情説明書は裁判所のホームページでダウンロード可能

離婚調停にかかる費用は収入印紙1,200円、郵便切手代800円前後、弁護士へ調停依頼した場合は別途弁護士費用も必要となります。

調停が成立すると調停調書が作成されるため、本籍地の市町村役所へ10日以内に離婚届と一緒に提出します。必要な持ち物は印鑑と身分証明書です。また、離婚届の相手方欄に署名と捺印は必要ありません。
※本籍地以外へ提出する際は戸籍謄本が必要です。

離婚後に必要な手続き

以下では、離婚後に必要な手続きを紹介します。

国民健康保険への切り替え、名義や住所の変更

相手方の扶養に入っていない場合はこの手続は必要ありません。
扶養に入っていた場合は離婚後14日以内(過ぎても加入は可能)に国民年金保険へ加入する必要があります。また、国民健康保険に加入済みであっても名義や住所の変更は必要です。

世帯主の変更

これまで住んでいた家に自分が残り世帯主が自分でない場合は、離婚後に世帯主を変更する必要があります。本人確認書類、国民健康保険、印鑑を持参し役所で手続きしましょう。

住民票異動届の提出

離婚に伴い住居が変わる場合は住民票異動届を提出します。引越し後、2週間以内に提出する必要があるので注意しましょう。

離婚したら会社に報告すべき?

離婚しても会社へ報告する義務はありません。しかし離婚することで扶養家族の増減が生じるため、会社の関係部署への報告が必要になります。

会社から受けている福利厚生や家族手当、厚生年金や健康保険など社会保険の手続きで扶養家族の有無や人数、配偶者の有無などの報告が必要です。また、年末調整の書類などでも扶養家族の有無を報告する必要があります。

離婚後に会社で手続きしないことで会社から多く手当をもらったり、本来収めるべき税額ではなかったりと問題が発生します。職場の人たちに離婚を報告する必要はありませんが、関係部署への連絡と手続きは必ず行いましょう。

離婚後の子どもの名字、戸籍はどうなる?

離婚で親権を持ち、自身を旧姓に戻しても、子どもの戸籍上の名字が自動的に変更されることはありません。離婚によって子どもの名字を変えるには自身の名字を変更してから子どもの戸籍を親権者の戸籍へ移す必要があります。

離婚後に子どもの名字を変更する手順は以下の通りです。

1.「子の氏の変更許可の申立書」で裁判所へ申し立てる
申し立てする裁判所は子どもの住所地です。必要書類は以下になります。
・申立書
・子の戸籍謄本(全部事項証明書)
・父、母の戸籍謄本(全部事項証明書、離婚記載のあるもの)
・収入印紙(子ども1人につき800円)
・返信用切手
※「子の氏の変更許可の申立書」は裁判所ホームページからダウンロード可能
※収入印紙は裁判所で購入可能

2.子どもの戸籍を自分の戸籍へ移す
申し立てが認められると裁判所から審判謄本が送られてくるので、子どもの本籍地か自分の住所地の役所で以下の書類を準備し戸籍変更手続きを行います。
・審判謄本
・入籍届(市町村ホームページからダウンロード可能)
・戸籍謄本(本籍地以外での手続き時)
・マイナンバーカード(個人番号カード)

まとめ

離婚には離婚届や離婚協議書、会社や役所での変更、戸籍の移動などさまざまな手続きや準備が必要になります。

特に夫婦間で離婚時や離婚後の取り決めを話し合う際には、自分で判断できない事項やトラブルに繋がりやすい事項に対し不安を感じるものです。

離婚後の取り決め、離婚協議書の作り方や内容などに不安があるなら弁護士への相談をおすすめします。離婚問題に強い弁護士であれば経験やノウハウをもとに、ためになるアドバイスをもらえるでしょう。