DVについて
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DVとは
家庭内暴力(DV,ドメスティックバイオレンス)とは,家族である夫や妻に対して振るわれる暴力(虐待)のことです。また,DVは,婚姻関係にはない恋愛中・婚約中のカップル間でも起こることがあり,この場合は「デートDV」とも呼ばれます。
DVは,必ずしも単なる身体的暴行に限られません。性的な暴力,レイプ,暴言を吐く行為,あるいは生活費を渡さないことで精神的ストレスを与えることなども含まれます。
DVは,家庭内という閉ざされた空間の中で行われることが大半です。
そのため,DV被害は外部からは発見しにくく,被害者が自分から訴えない限り,犯罪が明らかになることはほとんどありません。
また,下で説明するDV被害者特有の心理から,そもそも自分がDV被害者だということに気が付いていない方もいます。
DV被害者は,必ずしも女性だけとは限りません。夫が妻からDVを受けるケースもあります。もっとも,配偶者から暴力を受ける場合,女性が被害者となる場合が大多数を占めます。
そこで,以下では,妻(女性)がDV被害者であるケースを念頭に置いて,DVと離婚について説明させていただきます。
DVの種類
一口に「暴力」といっても,様々な形態があります。
具体的には,次の5つの種類に分けられます。また,これらの種類の暴力のうちの複数が重なって起こることも少なくありません。
身体的虐待
殴る,蹴る,平手で打つ,突き飛ばす,熱湯や水をかける,髪を引っ張る,首を絞める,部屋に閉じ込める,タバコの火を押し付ける,刃物や凶器を身体に突きつける,物を投げつける,引きずり回す…などの一方的な暴力行為をいいます。
暴力をした後,急に優しくなって謝ってくるなど,二面性があることもDV加害者の特徴です。
精神的虐待
日常的に罵る,無視する,大声で怒鳴る,大切にしているものを壊したり捨てたりする,人前で馬鹿にしたり命令口調でものを言ったりする,子どもや身内を殺すなどと脅す,別れるなら死ぬなどと狂言を弄する…などの行為で,相手にストレスを繰り返し与える行為をいいます。
性的虐待
嫌がっているのに性行為を強要する,中絶を強要する,避妊に協力しない…など,相手の気持ちを無視した性的侵害行為をいいます。
経済的虐待
生活費を渡さない,仕事を制限する,買い物の決定権を奪う,家のお金を勝手に持ち出す,お酒・ギャンブル・女性関係に生活費をつぎ込む,勝手に配偶者の貯金を使う…など,自分が家計を管理して経済的に配偶者よりも優位な関係に立とうとする行為をいいます。
社会的虐待
実家や友人との付き合いを制限する,電話やメールを執拗にチェックする,外出することを禁止する…などの行為によって,配偶者を物理的にも精神的にも孤立させる行為をいいます。
精神的虐待,経済的虐待,社会的隔離については,暴力の態様がモラハラ(モラルハラスメント)と重なる部分があります。
これらについてお悩みの方は,「モラハラについて」のページも併せてご覧ください。
我慢して一人で抱え込まないこと,適切な機関に解決を求めることが,なにより重要です。
ひとつでもあてはまるものがあれば,専門家に一度ご相談することをお勧めします。
家庭内暴力はなぜ起きるのか
家庭内暴力(DV)には,一定のサイクルがあります。
緊張期,爆発期,安定期(ハネムーン期)の3種類の期間を循環します。また,その循環が次第に早くなり,どんどんエスカレートしていきます。
以下がDVのサイクルです。
DVサイクル1 緊張期
次の爆発期に向かって内面にストレスを貯めている期間です。
女性を自分の思い通りにしたい,支配下におきたいという願望が満たされないことに対してストレスを溜めます。
優しかった安定期の後に些細なことで怒るようになったり,ピリピリと神経質になっている時期です。
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DVサイクル2 爆発期
蓄積期に溜め込んだストレスの限界がくると,突然,暴力を振るい始めます。
多くは突発的なのでいつ暴力が起きるかのかが予測困難ですし,衝動を抑制できなくなっているため大変危険です。
女性の態度や行動,自分の身の回りの状況が自分の思い通りにならないストレスを発散している期間であり,女性に対して様々な暴力を駆使して自分の思い通りに行動するように強要している期間です。
そして,これからも自分の思い通りにコントロールしやすいように,相手に恐怖心や無力感を植えつける期間でもあります。
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DVサイクル3 安定期(ハネムーン期)
暴力によってストレスが発散された状態です。比較的安定した精神状態のため,安定期と呼ばれています。
また,ストレスが発散された事により、急に優しくなってプレゼントなどを買ってきたり「二度と暴力は振るわない」と約束したり「俺が悪かった」などと泣いて謝罪したりするのでハネムーン期とも呼ばれています。
そして次の暴力に向かってストレスを溜め込んでいく蓄積期に移行していきます。
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再び,緊張期へ(無限ループ)
DV夫が常に暴力を振るうわけではないのは,このメカニズムからです。
加害者に優しい時期と暴力的な時期があり,DVに該当するのかどうか迷われるときは,専門家に一度ご相談ください。
DV被害者の特徴
>なぜ逃げることができないのか?
DV被害を受けている多くの女性は,安定期にある男性を本来の「彼」だと思っています。そのため,暴力を振るわれている最中は恐怖を感じているものの,「これは本来の彼ではない。今が異常なだけであって,本当は優しい人なの」と思ってしまいがちです。
暴力を振るった後に急に優しくなるというDV夫の二面性こそが,被害者が離婚に踏み切るのをためらわせていると言っても過言ではありません。
また,暴力を振るわれることへの恐怖や,逃げることの出来ない状態により,「私が耐えればいい」「どうやっても無理だ」という無力感に囚われ,暴力から解放されることを諦めるようになってしまった被害者もいます。
ある意味DV夫にマインドコントロールされている状態であるため,結果的に,負のサイクルに陥ってしまうのです。
さらに,夫の収入がなければ生活できないという経済的な問題や,子どものこと,あるいはこれまで築いてきた仕事や地域社会との関係を失うことを恐れて,離婚をためらってしまう方もいます。
>勇気を出して,まずはご相談下さい
いずれの理由にせよ,本当にあなたに対する優しさがあれば,一生を誓い合った配偶者に傷つく言葉を浴びせたり,暴力をふるったりすることは決してしないはずです。
相手からの理不尽な仕打ちに耐え忍ぶ人生から抜け出したいと感じているならば,勇気を出して別居や離婚に向けた具体的な方策を考え,行動を起こしましょう。
加害者自身が自分の言動がDVに該当するということに気づき,かつ,それを正そうという気持ちにならない限り,DV夫の二面性が治ることはありません。
「いつか彼が変わってくれるかもしれない…」といった甘い期待は捨てて,相手の二面性にはもう惑わされないという強い気持ちを持つことが大切です。
まだ悩まれている方も,第三者と話すことで客観的に状況を把握でき,落ち着いて今後のことを考えることができるようになります。
そのためにも,まずは一歩を踏み出して,専門家にご相談ください。
DV夫と離婚する方法
DVの証拠集め
DVは,「その他婚姻を継続し難い事由があるとき」(民法770条1項5号)に該当すると考えられますから,離婚事由となり得ます。
また,当然,慰謝料請求の対象になります。慰謝料の金額も,傷害の程度によっては,モラハラによる慰謝料よりも高額になる傾向があります。
もっとも,日常的にDVを受けている場合であっても,証拠がなければ,被害を認めてもらうことはできません。
そうならないためにも,DVの証拠を確保することが非常に重要です。
具体的には,次のような方法でDVの証拠を集めておきましょう。
①写真を撮る
暴力によってできたあざや,散乱した部屋,破れた衣類,壊れた家具や物品の写真を撮っておきましょう。特に怪我については,時間の経過によって治癒して消えていくため,消える前に,できる限り自分の顔も含めて,写真に残しておくことです。
②診断書を取る
写真には残していても,医師による診断書がない場合が多くみられます。
実際に,DVに耐えかねて離婚を決意されているのであれば,また迷っている場合においても,DVは場合によっては犯罪行為ですので,医師による診断書を残して傷害の程度を後に証明できるようにしておくことをお勧めします。
③警察に相談する
DVの程度がひどい場合は,警察に相談にいく等の対応が必要となる場合もあります。警察に助けを求めたことは調書に残りますから,それがDVの証拠になります。場合によっては,それが保護命令の申立ての際にも役立つことになります。
④相手の発言や暴力を録音する,日記につける
加害者が暴言を吐く状況や,暴力を振るったことを認めて謝るような状況を録音しておくと,それも証拠になります。録音することが難しい場合には,その内容を日記につけておくと良いでしょう。
弁護士に相談する
DVでお悩みの方は,まずは早いタイミングで弁護士などの適切な専門家に相談してください。あなたが早い段階で相談すればするほど,弁護士も最も豊富な選択肢の中から最善のアドバイスをさせていただくことができます。
離婚に踏み切る気持ちが固まっていない段階でも構いません。弁護士があなたに離婚を強いて勧めるようなこともありません。
それでも,勇気を出して相談いただくことが,現状から抜け出すための大きな一歩につながります。
暴力の程度によっては,別居しなければ身の安全が脅かされることもあります。そのような場合には,速やかに別居することが大切です。
もっとも,自分一人では何から手をつければよいのか分からない場合がほとんどでしょう。
弁護士に依頼していただくと,離婚に向けた別居のサポートをさせていただくこともできます。何より,弁護士はご依頼者様の代理人になることができますから,あなたに恐怖心を植え付けてくる加害者と直接やりとりしなくてよくなります。
いずれにせよ,独りで悩まないでください。
まずは,信頼できる弁護士などの専門家にご相談下さい。
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