養育費調停の流れや費用

子どものいる夫婦が離婚を決めたときに考えなくてはならないのが「養育費の取り決め」です。
大切な子どもの将来を考えると養育費については一切の妥協をせず、徹底的に検討する必要があります。

また、養育費は支払われる金額によって今後のお互いの生活に大きな影響を与えるものです。

「養育費の支払い期間はいつまで?」「養育費の金額はどのように決めるのか」といった疑問や悩みも多数あることでしょう。
そこで今回は養育費調停の概要や検討するべき内容、金額の判断基準、養育費調停の流れや必要な費用、養育費調停を有利に進める方法などを詳しく解説します。

養育費調停を検討している方にとって有益となる情報をまとめているのでぜひ参考にしてください。

養育費調停とは?

養育費調停とはどのような制度なのでしょうか。詳しく解説します。

養育費調停が行われるケース

子どものいる夫婦が離婚する際に争点となりやすいのが「養育費の金額や支払い方法」です。

当事者同士の話し合いによって決めるべきことですが「協議が上手くまとまらない」「一方が協議に協力的でない」など問題が発生する場合があります。
そういうときは家庭裁判所に申し立てることで「養育費調停」を行うことが可能です。

養育費調停が行われる状況には「養育費を請求したい場合」「養育費の増額を目的とする場合」「養育費の減額を目的とする場合」の3つがあります。調停の内容はそれぞれ異なりますが、いずれも裁判所を通して話し合いを進める方法です。

養育費調停で決定されること

養育費調停で決定できる項目は「養育費の支払いの有無」「養育費を支払う場合の金額」「養育費の支払い方法」「養育費を支払う期間」に大きく分かれます。
養育費の支払い期間は「子どもが何歳になるまで支払うか」を争点に協議されることが多いです。

このような協議を当事者同士のみで行うと曖昧な決定になったり、後々のトラブルに発展したりする場合があります。第三者を介して冷静に話し合えるというのも養育費調停のメリットだと言えるでしょう。

養育費の決め方

続いて養育費がどのような判断基準で決められるのかを解説します。

養育費調停において最大のポイントとなる「養育費の金額」は「養育費算定表」という裁判所が定めた基準をもとに決められます。
夫婦の年収や子どもの人数・年齢から養育費を計算する方法ですが、もちろん当事者同士の希望も考慮されます。

「養育費の支払い期間」は法律的に上限が定められているわけではありません。仮に「子どもが成人するまで」と決めてしまうと、子どもが4年制大学に進学した場合、親権者に大きな負担となるでしょう。あらゆるケースを想定して「高校を卒業する時点で再検討する」など一定期間を確約するのも一つの手です。

「養育費の支払い方法」は月々の分割払いだけでなく一括払いにすることも可能です。支払いの期日なども含めて、お互いの事情に合わせて検討されます。

養育費が減額できる条件

養育費の支払いを分割にした場合、途中で支払いが困難になるケースがあります。養育費が減額できる4つの条件は以下の通りです。

・養育費を支払う側が再婚し、扶養家族が増えた
再婚相手との間に子どもができたり再婚相手の子どもと養子縁組を結んだりした場合、または再婚相手の収入が少ない場合に減額を求めることが可能です。

・養育費を受け取る側が再婚した
子どもが再婚相手と養子縁組を結び経済的に余裕が生まれる場合、支払い側は免除か減額を求めることが可能です。

・支払う側の収入が減った場合
会社の業績悪化や失業などを理由に収入が大きく減った場合、減額や免除の請求が可能です。

・受け取る側の収入が増えた場合
養育費を受け取る側の収入や資産が増えた場合、減額を求めることが可能です。

養育費調停の流れや必要な費用は?

ここでは養育費調停の流れや必要な費用について解説します。

養育費調停の流れ

まずは、養育費調停の申立書と必要書類を家庭裁判所に提出します。
調停申立に必要な書類には「養育対象となる子どもの戸籍謄本」のほか、申立人の収入を把握するための「源泉徴収票のコピー」「給与明細のコピー」「非課税証明書のコピー」「確定申告書のコピー」などがあります。

調停のスケジュールが決まると、家庭裁判所から夫婦双方に調停期日呼出状(離婚調停の第一回の調停日を知らせる書類)が送付されます。
調停の回数に決まりはなく、月に1度のペースで調停を行い、最終的には「成立」「不成立」「取り下げ」のいずれかが決定されます。

成立後はお互いの合意を示す書類を発行し、協議完了です。お互いの合意が難しく、不成立となった場合は審判に移行します。
「取り下げ」とは申立人が取り下げ書を提出し、調停が終了するケースです。
養育費調停にかかる期間は事案によって異なりますが、一般的には早くて1ヶ月、最も多いのは3ヶ月~6ヶ月以内となります。1年以上かかるケースは極まれだと言えるでしょう。

養育費調停にかかる費用

養育費調停の申立に必要となる費用は対象となる子どもの人数によって変動するため、およそ2,000~4,000円が目安となります。費用の内訳は、裁判所に納めるべき「収入印紙1,200円」と「郵便切手1,000円」です。収入印紙は子ども1人につき1枚必要となります。

養育費調停に相手が欠席した場合

養育費調停を申し立てたにもかかわらず、相手が裁判を欠席するケースがあります。裁判所は相手方に対して出頭を促す通知を出しますが、それにも応じなかった場合、調停は自動的に不成立となります。

裁判所が「欠席した当事者に出頭する意思がない」と判断した後は、養育費調停は裁判所の判決によって決まる「審判」へと移ります。

調停は双方の意見を第三者が聞いた上で双方が合意する必要がありますが、審判は申立人の証言や手続きのみで進めることができます。申立人にとっては「スピーディーに決着をつけられる」というメリットがあるでしょう。

養育費調停を有利に進めるために

養育費調停を有利に進めるために押さえておくべきポイントを解説していきます。

離婚に強い弁護士に依頼

養育費請求の調停は裁判所を介したとしても基本的に「夫婦の話し合いの場」です。しかし本人が調停に出席するにあたり、事前に弁護士をつけておくことでアドバンテージを確保することが可能です。

法律のプロである弁護士からは調停を進めるために有利なアドバイスを得られるでしょう。また、弁護士をつけていることで「調停に対して真剣である、本気である」という印象を調停委員に与えられます。

養育費の相場を理解しておく

養育費の金額は「養育費算定表」をもとに算出されますが、自ら相場を把握しておくことも大切です。
現実的には、将来的に子どもが習い事をしたり希望する進学先があったりなど、算定表通りにはいかない出費が予想されます。

子どもの人数に対して年収がどの程度あり、いくらあれば最低限の生活ができるかといった想定に加えて「片親であることで不自由をさせないための金額」も養育費の概算として出しておくと良いでしょう。

必要な養育費の額を証明する証拠を集める

養育費調停にかかわらず、裁判の場で自らの主張をし、それを裁判官に認めてもらうには十分な証拠を示す必要があります。

養育費を受け取る側が「金額が少ない」と感じた場合「相手にはこれほどの収入がある」ことを主張しましょう。子育てに必要な養育費を証明するためにも、当事者双方の収入が明らかとなる書類を提出することが大切です。

審判の申し立てを検討しておく

養育費調停に相手が欠席した場合、調停は自動的に審判へと移行します。しかし相手が普段から話し合いに非協力的であれば、調停を経由せずに始めから審判を申し立てることが可能です。

審判では相手の収入を証明できる書類が必要となるので、念入りに準備しておきましょう。

相手が養育費を支払わないときの対応は?

養育費を請求する側が「養育費を受け取れていない」というケースは多くあります。相手が養育費を払わない場合、どのような対応をするべきか解説します。

内容証明郵便で請求

離婚後に相手となるべく接触したくない場合、内容証明郵便を送付することで養育費の催促が可能です。

内容証明は手紙の一種であり、日本郵便が提供するサービスの一つです。相手に書面を送付した事実を郵便局に証明してもらえるため「請求文書を受け取っていない」という相手の主張は通らなくなります。

養育費の未払いを請求した証拠となる上に、相手にプレッシャーを与えられるのもメリットです。

養育費支払調停を申し立てる

離婚したとしても、親には子どもを扶養する義務があります。養育費の支払いがストップした場合、養育費支払調停を申し立てることができます。

一般的に調停を行う際は、元配偶者が住む地域の家庭裁判所や双方が希望する裁判所へ申し立てます。

履行勧告・履行命令を行う

履行勧告は、家庭裁判所が養育費の未払い状況を調査して事実が明らかになった場合、相手方に支払いを勧告します。手続きは簡単ですが、強制力はありません。

履行命令は、家庭裁判所が「一定の期間内に養育費を支払うこと」を未払い側に命令します。こちらも強制力はありませんが、違反した場合は「10万円以下の過料処分」という制裁が与えられます。

強制執行で回収する

上記の要求を行っても養育費が支払われなかった場合は「強制執行」という最終手段を用います。裁判所を介する「強制執行」では、支払い期日に応じなかった相手の財産を差し押さえ、強制的に回収してもらうことができます。

まとめ

養育費調停を検討している場合は事前に必要書類や情報を集めておくことをおすすめします。離婚事案に強い弁護士に依頼することで心強い味方を得られるだけでなく、調停を有利に進められるでしょう。

自身が置かれている状況において「ベストな解決方法が分からない」と言う方も、まずは弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。
特に離婚問題に強い弁護士であれば、これまでの経験やノウハウからより有利な状況に近づくためのアドバイスがもらえる可能性が高いでしょう。



監修者:弁護士法人西村綜合法律事務所 代表弁護士 西村啓聡
[経歴]
東京大学卒業
第2東京弁護士会登録、岡山弁護士会登録

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