養育費として学費がもらえるのか

未成年の子どものいる夫婦が離婚する場合、養育費の支払いは懸念事項の1つです。相手に十分な養育費を支払ってもらえるだろうかと、心配に感じている方が多いです。

まだ小さいうちはそれほどお金もかかりませんが、中学・高校・大学と、歳を重ねるごとに学費はどんどん高くなっていきます。そんな中、塾や受験の費用、授業料といった学費が、養育費としてどこまで認められるのか、気になっている方も多いのではないでしょうか?

そこで今回は、「離婚後の養育費として学費がもらえるのか?」というテーマについて、詳しく解説していきたいと思います。

養育費に学費は含まれるのか

結論から言えば、養育費に学費は含まれます。

そもそも養育費は、子どもを監護・教育するために必要な資金のことで、一般的には家庭裁判所が公表している「養育費算定表」を用いて取り決めることが多くなっています。

(裁判所→https://www.courts.go.jp/toukei_siryou/siryo/H30shihou_houkoku/index.html

養育費算定表は、もともとは裁判所が研究・作成したもので、2003年に法律雑誌に掲載されたことをきっかけに、現在では全国の家庭裁判所で用いられています。昨今においては、現代の社会情勢が反映されていないことなどを理由に、2019年12月に新しい基準となった算定表も公開されています。これから養育費の金額を決めるという方、すでに決められている金額から増額したいという方は、最新の養育費算定表を必ず確認してください。

ただし、養育費算定表は、子どもが公立の中学・高校に進んだことを前提としているため、私立に進んだ際や大学の学費については考慮されていない点に注意が必要です。養育費算定表を利用する際は、この点を考慮した上で養育費の取り決めを行いましょう。

離婚後の養育費とは

そもそも離婚後の養育費とは、子どもを監護・教育するために必要な資金です。

両親が離婚したからといって、子どもとの親子関係が無くなってしまうわけではありません。一般的に、子どもの親権を持っている側が一緒に住む監護親となって教育に当たりますが、一緒に住むことができない非監護親は、代わりに養育費の支払いを求められます。

とはいえ、養育費は無制限に請求できるものではありません。子どもと一緒に暮らす監護親側の生活と、非監護親側の生活が同等程度になるのが理想的とされています。

養育費に学費が含まれる根拠

養育費というのは、本質的には民法第877条第1項の「直系血族に対する扶養義務」からくるものです。よって、金銭的な余裕がないといった特段の事情がない限り、非監護親は子どもに対して養育費を支払う義務が生じています。

この養育費に学費が含まれる根拠としては、現在の日本の教育では学校に行って学ぶことが必須なのは言うまでもありません。そのために必要な学費というのは、子どもを育てる上で必ずかかる費用であることからも、養育費には学費も含まれていると考えられています。

養育費に含まれる学費の相場

上述したとおり、子どもが公立の中学・高校に進んだ際は養育費算定表がそのまま相場と言えます。では、私立に進んだ際の学費の相場というものはあるのでしょうか?

そもそも、離婚後の養育費というのは、夫婦間の話し合いによって取り決めるものです。養育費算定表を基準にすることが多いのは事実ですが、絶対ではありません。

もし、私立に進むことを前提として考えている、進むことを希望しているといった場合は、算定表よりも養育費を増額するなどの調整が求められます。ただし、養育費算定表以上の金額を請求する際は、相応の理由が必要となる点に注意しましょう。ただ私立に進ませたいといった、監護親側の願望だけで実現するものではありません。

私立大学費が認められるケース

では、どういった理由があれば、私立や大学への進学費用が認められるのでしょう?

以下にて具体的なケースについてご紹介します。

支払義務者が承諾している場合

私立や大学への進学費用について、支払義務者となる非監護親が承諾している場合は、養育費は増額されるのが一般的です。たとえば、両親がどちらも私立への進学を希望しているなど、双方が合意しているのであれば、算定表にとらわれることなく、自由に金額を取り決めて問題ありません。

一方で、非監護親が増額に応じてくれない場合でも、双方の現在の収入や社会的地位、子どもの学力などから見て、私立や大学への進学が妥当であるといった場合では、養育費の増額が認められるケースがほとんどとなっています。

なお、ここでいう「認められる」というのは、養育費の話し合いが調停や審判にまで発展してしまった際に、裁判官から認められるといった意味合いです。

非監護親に養育費の支払い・増額求める手続きは、「養育費(請求・増額等)調停」といって、相手の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てることが可能です。

事情の変更を理由に養育費の増額が認められる場合

子どもが小さいうちは、私立の中学・高校に進むことになるのか、大学への進学を希望するのかといったことはまだわかりません。よって、離婚時の養育費については算定表を基準に取り決められることがほとんどです。しかし、子どもが大きくなって私立や大学への進学が見込まれる場合、事情の変更を理由に養育費の増額を求めることが可能です。

その際は、支払義務者が承諾してくれれば、特に手続きを踏むことなく養育費は増額されます。しかし、すでに養育費の取り決めから何年も経っている場合、支払義務者側も再婚をしていたりと、事情が変わっていて増額に応じてくれない、といったケースもめずらしくはありません。このような場合は、改めて養育費について協議するか、上述した家庭裁判所の調停手続きを利用し、双方にとって妥当な金額を取り決める必要があります。

子どもの学費のために養育費を請求したい方は弁護士に相談ください

以上のとおり、養育費として学費をもらうことは可能となっています。

しかし、相手が支払いに応じないなど、養育費の請求、もしくは増額というのは簡単にはいかないケースがほとんどです。特に、子どもと一緒に暮らしていない非監護親にとって、増額が本当に必要なのか疑問に感じる方も多いですし、そもそも養育費の支払いをまったくしない方もいます。養育費というのは、子どものために支払われるべきものなので、監護親が子どもに代わって、しっかりと支払ってもらえるよう交渉しましょう。場合によっては、家庭裁判所を利用した調停や審判といった手続きも見据える必要があります。

もし、子どもの学費のために養育費を請求したい、増額したいといった方は、弁護士に相談することをおすすめします。弁護士であれば、代理人として交渉の席に立つことができますし、調停や審判といった手続きも任せることができます。

なお、当事務所には離婚問題に精通した弁護士が在籍しておりますので、養育費の請求・増額等についてお悩みの方は、ぜひお気軽にご相談ください。

 



監修者:弁護士法人西村綜合法律事務所 代表弁護士 西村啓聡
[経歴]
東京大学卒業
第2東京弁護士会登録、岡山弁護士会登録

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