モラハラについて

モラハラを原因とする離婚は近年増加しています。
今回はモラハラ夫(妻)と離婚したいと考えている方に向けて、モラハラ夫(妻)と離婚する方法、慰謝料請求や親権に関する問題について説明します。

モラハラとは

モラルハラスメント(モラハラ)とは、言葉や態度を用いて相手の人格をおとしめ、精神的に虐待することをいいます。精神的なDV(ドメスティックバイオレンス)の一種とされています。
簡単にいうと、家庭内での「いじめ」のようなものです。

モラハラ行為の具体例

モラハラ行為の典型例は、以下の通りです。

・話しかけたのに無視される
・あなたを丸め込んで従わせようとする
・「バカか」「ダメに決まっているだろ」「お前は何もできない」などと相手をおとしめる
・何を言っても否定してくる
・人前で悪口を言う、良くない点を嘲る
・態度で不快感を表す(わざと大きな音をたててドアを閉める、大きなため息をつくなど)
・相手に釈明の機会を与えず、そもそも話し合う気がない
・反論すると口答えするなと逆上する
・あなたの親族、友人や同僚の悪口を言う
・店員や年下の人に対して横柄な態度を取る

モラハラ加害者の特徴

モラハラ夫(妻)には、以下のような共通する特徴があります。

①結婚するまでは優しくて親切

モラハラ夫(妻)は、相手の人格を否定し続けて、「自分は無力な人間である」と相手を洗脳し、コントロールしようとします。 多くの場合、結婚して経済的にも精神的にも加害者と離れがたい状況になった段階で豹変し、劣等感を植え付けてきます。

②世間体は良いが,裏の顔がある

モラハラ夫(妻)は人間関係を「強さ」と「損得勘定」で判断し、格上の人間に対しては下手に出る反面、格下の弱い人間に対してはとことん横暴な振る舞いをします。
モラハラの加害者は、周囲からの評価をとても気にするため、外では「いい人」,「立派な人」を演じます。しかし、パートナーに対しては、自分より格下であると判断し、相手の心を傷つけるような言動でストレスを発散します。

③突然怒り出す、無視する

モラハラ夫(妻)は、自分の要求が通らないと無視や無言を長時間続けたり、家中の物に当たり散らしたり、態度で怒っている雰囲気を見せつけてきます。そのほか、定期的に理不尽に怒り出し、自分が優位な立場にいることを被害者に知らしめようとします。
被害者が話し合いを試みても、理不尽に怒鳴りつけたり無視したりするため、建設的な会話は期待できません

④何もかも人のせいにする

モラハラ夫(妻)はプライドが高く、自分を特別な人物だと思っています。
自分は絶対に正しいと過信しているため、家庭内で何か問題が起こっても被害者のせいだと責任転嫁をします。自分に原因があることが明らかな場合でも、妻(夫)に原因があると主張し続け、絶対に自分の非を認めません。

⑤モラハラ環境で育った

モラハラ夫(妻)自身がモラハラ環境で育った場合、家庭内で上に挙げたような言動をとるのが普通のことだと思っているケースもあります。自分の父親が母親や自分にしていたことを、今度は妻や子供に対して行うのです。
このように家庭内の生育環境が世代を超えて伝わっていくことを、「世代間連鎖」をいいます。

モラハラを受けるとどうなる?

モラハラは「目に見えない暴力」で、時に深刻な被害につながることもあります。
モラハラの被害者に生じる被害について確認しましょう。

①被害者(配偶者)への影響

モラハラは「目に見えない暴力」です。
モラハラによるストレスが蓄積していくと、無力感やイライラ感、不眠や食欲不振といった初期症状が出てきます。さらに症状が進行すると、抑うつ状態や精神疾患を発症し、被害者は心身に重大なダメージを受ける可能性があります。
相手に支配されていることにあまり自覚が持てないという方もいるようです。が、しかし、常に相手の機嫌を損ねないように我慢や緊張を強いられる関係は、健全なパートナー関係とはいえないでしょう。

②子どもへの影響

モラハラが家庭内で起こっていると、子どもにも悪影響が生じます。
モラハラ家庭で育つ子どもは、被害者と同じく、加害者の顔色をいつも伺って言動に気を使うようになります。家庭内で安心感を得られないことが原因で、勉強に集中できなくなる可能性もあります。最も懸念すべき点は、子どもが自信を喪失して無気力になり、一生の傷を負ってしまうことです。

モラハラ被害者がすべきこと

加害者自身が自分の欠点に向き合わない限り、モラハラは決してなくなりません。
モラハラ夫(妻)と離婚するためには、ご自身で第一歩を踏み出すことが一番重要です。
離婚への第一歩を踏み出すにあたり、モラハラ被害者がまずすべき3つのことを紹介します。

①一人で抱え込まない

モラハラ被害者は、問題を一人で抱え込んで孤立してしまいがちです。しかし、そのような態度が加害者の行為を正当化させ、モラハラをエスカレートさせます。まずは誰かに相談することが重要です。

とはいえ、両親や友人といった周りの人に相談しても、モラハラに対する理解が乏しいと「大げさじゃない?」、「夫婦なんてそんなものでしょ。」などと言われてしまう可能性があります。そうなれば被害者は自分が間違っているのではないかと思い込んでしまい、問題解決からかえって遠のいてしまいかねません。
そこで、まずは専門家に助けを求めてください。モラハラに精通した専門家であれば、あなたの悩みを的確に捉えてサポートできます。
モラハラ被害者の多くの方は、現状を変えることはできないと無力感を覚えています。
しかし、勇気を持って一歩踏み出せば、必ず状況は変わります。決してあきらめないことが重要です。

②別居する

モラハラ夫(妻)との離婚を考えている場合には、まずは別居して加害者と物理的な距離を置くことが大切です。
モラハラ被害者は、家庭内という閉鎖的な空間の中で繰り返し尊厳を傷つけられるような行動を取られ続け、自分は無力で価値のない人間だと思い込んでいます。そのため、モラハラ被害者は「自分を傷つけている人間から離れるべき」という当然の判断もできないような状況に追い込まれていることも少なくありません。また、モラハラ夫(妻)に対する恐怖心から別居に踏み切れないこともあります。

このような場合、まずは別居してモラハラ夫と距離を置いて、冷静な判断ができるような状態になるまで心身を回復させることが重要です。まずは心身の安全を確保してから、具体的に離婚協議を進めていきましょう。

③モラハラの証拠を集める

モラハラを理由に離婚するためには、モラハラがあったことを証明できる証拠が必要です。
モラハラ夫(妻)には、自身の言動がモラハラ行為になるという自覚がありません。そのため、モラハラ行為をしたことを認めることは通常あり得ません。

また、モラハラ夫(妻)が離婚に素直に応じてくれることは極めてまれです。

そこで、調停離婚や裁判離婚に備えて「相手の言動が第三者から見ても耐えがたい」と言える程度の証拠を揃えることが必要です。具体的な証拠があれば、モラハラ被害を受けたという主張について、調停委員や裁判所を納得させることができます。

証拠の具体例は、次の通りです。
・モラハラを受けたことを詳細に記録した日記やメモ
・相手からの暴言や人格を貶めるような内容のメール
・モラハラ夫(妻)の言動を録音・撮影したもの
・モラハラによりPTSDや鬱になったことを記した医師の診断書
・警察や行政機関にモラハラ被害の相談に行った記録

離婚の話を切り出す前に証拠を集めておくこと、そして証拠を集めていることを相手に気が付かれないように動くことがポイントです。モラハラ夫(妻)夫に勘付かれてしまうと、相手が警戒して態度を変える可能性があるからです。

「少しでも証拠になりそうなものを集めておく」という意識で地道に証拠集めをしていきましょう。

モラハラ夫(妻)と離婚するまでの流れ

別居後は、モラハラ夫(妻)と離婚条件について交渉することになります。
3種類ある離婚の手続きについて、それぞれの離婚の流れを説明します。

①協議離婚

協議離婚は、夫婦で話し合いをして離婚届を役所に提出すれば離婚が成立するというものです。協議離婚するのに裁判所の関与は必要ありません。

加害者に対する恐怖心から、モラハラの被害者はモラハラ夫(妻)と対等に話し合うこと自体が難しい場合があります。この場合、協議離婚を成立させることは現実的な選択肢にはなりません。
そもそも、モラハラ夫(妻)は自分の発言や態度に問題があると思っていません。そのため、まともに話し合いができる可能性は極めて低いでしょう。それどころか自分を被害者に仕立て上げて逆上してくる可能性もあります。

また、モラハラの加害者は何とかして被害者を自分の支配下に置き続けようとしてきます。モラハラの被害者が自身で交渉を進めていくことはお勧めできません。
協議離婚のステップを飛ばして調停離婚に進むか、弁護士に依頼して交渉の代理人になってもらうことが賢明です。

②調停離婚

調停離婚は、夫婦間の話し合いだけでは離婚がまとまらないときに、家庭裁判所が選任した調停委員を介した話し合いによって離婚する方法です。

調停委員がモラハラを正しく理解していない場合、モラハラ被害者の発言を大げさだと捉えてしまい、離婚を考え直すよう説得にかかることもあります。
また、モラハラ夫(妻)は、自分は「良い人」であると周囲に印象付けることに慣れているため、調停委員に好印象を与える場合も多いです。
このような場合、被害者は調停委員を味方につけることが難しくなります。また、二次被害によってさらにダメージを受けることもあります。
また、調停離婚が成立するとしても、モラハラ夫(妻)とのパワーバランスや法律面での知識不足から不利な合意を強いられることもあります。

③裁判離婚

裁判離婚は、調停離婚でも話がまとまらなかった場合に夫婦の一方が家庭裁判所に離婚訴訟を起こし、裁判所の判決により離婚を成立させる手続きです。

裁判離婚が認められるためには、以下の法定離婚事由に該当しなければなりません。

第770条
⒈ 配偶者に不貞な行為があったとき
⒉ 配偶者から悪意で遺棄されたとき
⒊ 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき
⒋ 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき
⒌ その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき

モラハラを理由に離婚請求する場合、「2 悪意の遺棄」または「5 その他婚姻を継続し難い重大な事由」に該当する可能性があります。
モラハラの証拠が十分揃っていて夫婦間の関係が完全に破綻していると認定されれば、判決で離婚を認めてもらうことができます。
十分な証拠がなくても、別居状態が続けばいずれは離婚判決が得られます。別居が続いていること自体が婚姻関係の破綻を基礎付けるからです。しっかり証拠が揃っていなくても、諦めないことが大切です。

モラハラ夫(妻)からもらえるお金は?

モラハラ夫(妻)と離婚するにあたり、慰謝料請求や養育費など、お金のことも気になることでしょう。以下、離婚する際にモラハラ夫(妻)からもらえるお金について説明します。

①慰謝料

モラハラの被害者は、慰謝料を請求できる場合があります。
モラハラ慰謝料が認められるためには、相手方の行為が「違法」=「相手の言動が第三者から見ても耐えがたい」と認められるレベルのものでなければなりません。
それを立証するためには、モラハラの証拠があることが望ましいです。

モラハラ慰謝料の金額は、次のような事情によって増減します。
・モラハラ行為の回数
・モラハラ期間の長短
・モラハラ行為によりメンタルに異常が生じたか否か
・相手の社会的地位や支払い能力
・婚姻期間の長短
・子供の有無

モラハラ慰謝料の相場は、数十万円から最大200万円程度です。

②婚姻費用

婚姻費用とは、生活費、子供の養育費、交際費など、結婚生活を送る上で生じる費用のことです。
夫婦それぞれの収入を比較して、少ない側から多い側に生活費を渡すことを求めることができます。これを婚姻費用分担請求権といいます。

婚姻費用の支払い義務は、離婚の協議中・調停中・訴訟中であったとしても、離婚するまでは発生します。別居しているかどうかも関係ありません。

婚姻費用の金額は、家庭裁判所の定める「婚姻費用の算定表」に基づいて決められます。
婚姻費用の新算定表について、詳しくはこちらの記事をご覧ください。

③財産分与

財産分与とは、「婚姻後に夫婦が協力して取得・維持してきた全ての共有財産」を離婚時に清算することをいいます。

財産分与の対象になるのは、現金、家、自動車、家財道具など全ての資産です。
結婚前から所有していた個人の財産は対象にはなりません。

基本的には、5:5で資産を分けます。
財産分与について、詳しくはこちらの記事をご覧ください。

④養育費

養育費は、子どもを引き取る側が、他方の親(元配偶者)に対して請求できる費用のことをいいます。
養育費には、子どもの衣食住の経費や教育費、医療費、娯楽費など、自立するまでに必要となるすべての費用が含まれます。

養育費の金額も、婚姻費用と同じく、夫婦それぞれの収入に基づいて作成された「養育費の新算定表」から算出されます。
養育費の新算定表について、詳しくはこちらの記事をご覧ください。

モラハラ夫(妻)と離婚する場合、親権はどうなる?

モラハラの被害者は、自分は被害者だから親権者になれると考えがちです。しかし、モラハラと親権は別問題です。モラハラの被害を受けていたからと言って、必ず親権者になれるというものではありません。
以下、2つのケースに分けて、親権の取りやすさを説明します。

①被害者が妻のケース

調停や裁判は、「子の利益」を最優先に考えて親権者を決定します。
その際に考慮される基準がいくつかありますが、実務上最も重視されるのは「現実に子どもを養育監護している者が引き続き子どもを監護すべきである」という考え方(現状尊重の原則)です。
モラハラの被害者である妻が子どもを連れて別居すれば、比較的親権は取得しやすいです。
また、子どもが乳幼児など幼い場合には、母親の存在が必要であると判断される可能性は高く、親権が認められやすいです。

別居に踏み切る場合は、必ず子どもと一緒に家を出ることが重要です。

②被害者が夫のケース

夫(父親)は、モラハラの被害者であっても、妻(母親)と比べて親権を取ることは簡単ではありません。
仕事をしていて自分で子どもを見ることができない場合、親族の協力などがないと親権が認められにくい傾向にあります。
一度離れ離れになると親権を取ることは一気に難しくなるため、モラハラ妻と別居するなら、絶対に子どもを一緒に連れて家を出るようにしましょう。

モラハラを理由に離婚できるケース

モラハラを理由に離婚が認められる典型例は、以下の通りです。

ケース1 相手が離婚に応じる場合

相手の同意があれば、モラハラかどうかにかかわらず離婚することができます。
協議離婚や調停離婚の場合、夫婦間で離婚の合意さえあれば、法定離婚事由がなくても離婚できるからです。
ただ、ほとんどのモラハラ夫(妻)は自分が加害者であるとは夢にも思っていません。そのため、離婚を切り出されてもなぜ相手が離婚したいのか理解できませんし、到底受け入れることもできません。
そのため、モラハラ夫(妻)が簡単に離婚に応じることは基本的にはありません。しかし、まれにすんなりと離婚を受け入れてくれるケースもあります。この場合には、慰謝料などのお金の面や親権で揉めなければ、協議離婚できます。

ケース2 法定離婚事由に該当する場合

モラハラ夫(妻)が簡単に離婚に応じてくれることは、基本的には期待できません。
協議離婚や調停離婚が不成立に終わり、最終段階である裁判離婚までいく可能性も視野に入れておくことが必要です。
モラハラ夫(妻)が絶対に離婚には応じないと言っていたとしても、法定離婚事由に該当するのであれば、裁判官が判決でモラハラ離婚を認めてくれる可能性は十分あります。
相手はあの手この手であなたを言いくるめ、離婚を断念させようとしてくるかもしれません。強い気持ちと覚悟をもって離婚に臨みましょう。

モラハラを理由に離婚できないケース

モラハラを理由とした離婚が認められない典型例は、以下の通りです。

ケース1 モラハラの程度が低い場合

モラハラは目に見えないものであり、自分の受けている被害が「離婚事由になるほどのモラハラ」に該当するかの判断は簡単ではありません。
直接的な言動がなくても、しつこく質問や要求をしてやり込めるといった、外から見てわかりにくいものもあります。「自分が大げさに考えすぎているだけかもしれない」、「自分の状況はモラハラまではいかない」と即断することは危険です。相手のモラハラ行為を助長することになるからです。

そうであっても、モラハラ行為が「相手の言動が第三者から見ても耐えがたい」程度に至っていることは必要です。
・夫婦喧嘩に毛が生えた程度のいさかい
・物の言い方に棘がある
・感情面でムラがある
・返事が遅れると不機嫌になる
などという程度では、モラハラを理由として離婚できない可能性が高いです。

ケース2 モラハラの証拠がない場合

・頻繁に物を投げて壊す
・家事や掃除をちゃんとしていないと言って突然キレる
・取るに足らないことを理由に毎日数時間にわたる説教をされる
・「出て行け!」と怒鳴られることが頻繁にある
・夫の強い希望で仕事を辞めたにも関わらず、「お前は毎日休みでいいご身分だ」「俺が稼いでやった金だ」「お前たちのために働いてやっている」と言ってくる。

モラハラ夫(妻)は1つのモラハラ行為だけをすることは少なく、複数の方法や態様で攻撃してくることが一般的です。
上で挙げた例は、モラハラ行為と該当されやすい程度のひどいものです。
証拠があれば、比較的容易に離婚や慰謝料請求が認められる可能性が高いでしょう。

しかし、相当ひどいモラハラ行為を本当に受けていたとしても、証拠によって証明することができなければ、調停委員や裁判官にその事実を認めてもらうことはできません。
モラハラはその性質上外傷が残らない上、家庭内で起こることがほとんどです。目撃者などの証拠がないことが一般的です。
証拠がないために、モラハラ夫(妻)と離婚や慰謝料請求ができないケースが起こりやすいのも、モラハラ離婚の特徴です。

まとめ

モラハラの被害者の方は、相手の顔色をうかがったり必要以上に気遣いをしてしまったりする我慢強い性格の方が多く、「自分さえ我慢すれば大丈夫」などと考えてしまいがちです。
しかし、モラハラは「目に見えない暴力」でです。
被害者には、モラハラよって負った「心の傷」を相手に償ってもらう権利があります。

パートナーのモラハラに悩んでいる方は、どうか独りで悩まないでください。
相手の言動がモラハラと認定されて離婚請求や慰謝料請求ができるかどうか、まずは専門家に相談してみることをおすすめします。

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