離婚調停の流れと注意点!配偶者と会わなきゃいけない?弁護士は同席してくれる?

多くの方にとって,離婚調停は人生で初めての経験だと思います。

離婚調停にこれから臨まれる方,または離婚するか迷っている方は,聞きなれない専門用語や制度内容に不安を覚えられているかもしれません。

離婚調停の仕組みや内容を知ることは,落ち着いて,より充実した離婚交渉をすることにつながります。

そこで,今回は,離婚調停の流れや,注意すべきポイントについて説明したいと思います。

離婚調停の大まかな流れ

離婚調停は,夫婦の一方が申立人となり,申し立てられる相手方の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てて,その裁判所で調停手続が開始されるのが原則です。

調停の申立てがなされると,裁判所は,調停を行う日を決めて,申立人と相手方を呼び出します。申立てからおおむね1〜2ヶ月先の日が指定されるのが通常です。

 

離婚調停の大まかな流れは,次のようになっています。

<調停前の準備期間>

①離婚調停の申し立て(あるいは,離婚調停を申し立てられる)

②第1回調停期日

③第2〜3回調停期日

④第4回調停期日(成立・不成立見込みの調停期日)

<調停成立後の手続き>

 

このように,離婚調停は,調停期日が繰り返され,最終的に合意に達した場合には,調停成立で終了します。一方,合意ができない場合には,調停不成立(「不調」と呼ばれます。)で終了するか,取下げで終了することが一般的です。

 

調停の構成員

離婚調停に登場する裁判所関係者は,次のようになっています。

(1)裁判官または家事調停官

家事調停官の本業は弁護士で,離婚調停を非常勤で担当します。

裁判官・家事調停官は,同じ時間帯に沢山の家事調停を掛け持ちしているため,重要な場面でしか調停の場に出てきません。

(2)調停委員

調停委員は,40歳以上70歳未満で,弁護士となる資格を有する人,有用な専門的知識経験を有する人,社会生活の上で豊富な知識経験を有する人から選ばれます。

離婚調停では,男性1名,女性1名の計2名の調停委員が担当するという取扱いが定着しています。

(3)裁判所書記官

離婚調停が成立した場合に作成される調停調書の作成権限は書記官にあります。また,調停不成立による終了の記録も書記官が残します。そのため,書記官は,最終調整の場面などで,書記官が調停室に登場します。

(4)家庭裁判所調査官

調査官は,主に,親権に争いがある場合や,子どもとの面会交流の希望がある場合の事件に関与し,必要な調査を行います。

(5)当事者(申立人・相手方)

調停には原則として当事者本人が出頭しなければなりません。弁護士を代理人として出頭させることもできますが,本人と弁護士が同時に出頭することが原則です。どうしても本人が出頭できない場合には,弁護士のみの出頭でも認められていますが,第1回目調停と最終の調停期日では,必ず本人の出頭が必要です。

 

裁判官は,事前打合せをした上で,実際の調停の進行を2名の調停委員に任せています。

そのため,離婚調停手続では,申立人(&申立人代理人弁護士)と調停委員2人が調停室で話をする⇄相手方(&相手方代理人弁護士)と調停委員2人が調停室で話をする,という時間のサイクルがほとんどを占めます。

 

離婚調停期日の流れ

離婚調停期日は,通常,次の流れで進みます。

①離婚調停の受付

②調停が始まるまで控え室で待機

③第1回調停期日の最初のみ同席で離婚調停手続きの説明を受ける(原則)

④その後の離婚調停手続きの流れ

⑤次回の離婚調停期日の決定

Q.第1回期日は配偶者と絶対に同席しないといけないの?

第1回調停期日の最初には,調停室で,申立人と相手方が同席し,裁判所から調停手続の説明がなされるというのが原則になっています。

もっとも,相手と顔を合わせることで強い心理的ストレスを受けるおそれがあるような場合には,あらかじめ同席したくない旨を裁判所に伝えておくと,配慮してもらえる場合が多いです。

 

その後の離婚調停は,申立人と相手方が交代で調停室に呼ばれて,裁判所の関係者(ほとんどの場合,調停委員2名のみ)と話をします。

約30分で交代し,申立人・相手方が2回ずつ話をして合計2時間程度というのが,1回の調停期日の基本パターンになります。

調停室に呼ばれていないほうの当事者は,その間,控え室で待機することになります。

調停委員からよく聞かれること

離婚調停でよく聞かれる質問は5つあります。

この5つの質問は離婚調停でほぼ確実に聞かれると思って,事前に答えを用意しておきましょう。質問に対してどのように答えるのか事前にシミュレーションしておくことは,スムーズに調停を進める上でとても大切なことです。

 

(1)結婚の経緯

離婚というひとつの終着点を説明する前提として,そのスタート地点である結婚の経緯が聞かれることがあります。あくまで背景として質問するため,結婚の経緯を簡潔に説明すれば足ります。

(2)離婚しようと考えた理由

例えば相手の不貞行為があったことなど,離婚したい理由をひとこと,短い言葉で言えるよう準備しましょう。

(3)離婚する際の条件の希望

財産分与,慰謝料,年金分割について,どのような条件を希望するのか,なぜその金額を必要とするのか説明できるようにまとめましょう。子どもがいる場合には,これらに加えて,親権者,養育費,面会交流などの条件についても検討する必要があります。

離婚成立までの間の生活費(婚姻費用)についても,希望する場合には含まれます。

(4)夫婦関係が修復する可能性の有無

離婚したいという気持ちが一過性のものではなく,関係修復の努力をしたがもはや関係修復は不可能であって,熟慮を重ねた上での結論として,関係修復の可能性はないことを,しっかりと説明することが重要です。

(5)夫婦生活の現状についての確認

かなりプライベートな内容も含まれるため,気恥ずかしさもあるかもしれませんが,離婚調停の資料や情報として必要なことについては,しっかり説明することが大切です。

 

離婚を申し立てられた側(相手方側)の場合は,申立書に記載された内容をよく読み,申立人がなぜ離婚を希望するのか,そして相手の希望する離婚条件が何かを把握します。

その上で,各々についての自分の立場,その理由をまとめておく必要があります。

また,申立書に記載がない事情についても,申立人から言われる可能性のある事項について予測し,それに対する回答を準備します。

調停委員と話すときのポイント

(1)調停委員の共感を得る

離婚調停では,裁判所の調停委員に離婚の調整をしてもらうため,離婚調停の結論を出す際には,調停委員の意見や判断が大きく影響します。

そのため,あなたの希望する条件での解決をめざすのであれば,まずは,調停委員に,あなたの主張を正しく理解してもらい,共感してもらえるように話すことが必要です。

調停委員の共感が得られなければ,調停委員があなたの意に添うように相手方を説得してくれることも期待できません。

(2)要点を明確にして,主張に一貫性をもたせる

離婚調停の当事者は,同情してもらいたいという気持ちを抱いている方も多く,話の目的を忘れて,とりとめのない苦労話・不幸話を延々としてしまいがちです。多少感情的になってしまうことはやむを得ませんが,調停委員に対して,なぜその話をしているのかという目的から脱線してしまわないよう意識することが重要です。

自分の主張が正当であることを,話に一貫性をもたせて話すことが大切です。そのためには,調停委員に対して嘘をつかず,誠実に対応することも心掛けましょう。

(3)離婚調停不成立後の手続きを見据える

離婚調停は,あくまでも調停委員を媒介とした当事者間での話し合いにより離婚の合意を目指すものです。調停委員が離婚することや離婚条件について合意するよう勧めたとしても,当事者のうちの一方が合意しない限りは,調停が成立することはありません。

また,離婚条件で対立する場合には,互譲により,双方が納得する離婚条件に達することが必要であることから,必ずしも自分の希望通りの調停内容が成立するものではありません。

そのため,離婚調停では,希望が通らなかった場合の次善の策を立てておくこと,そして,調停不成立に終わった場合に離婚訴訟に移行することも視野に入れた上で,対策を練ることが重要となってきます。

場合によっては,離婚調停を成立させるよりも,離婚訴訟で争ったほうが有利になるケースもあり,離婚調停の段階から見通しをつけておくことが大切です。

 

まとめ

離婚調停という慣れない場で,しかも,精神的にも負荷のかかる離婚の話し合いを進めていくのですから,弁護士に依頼しない場合には,緊張してしまい,言いたいことを上手く伝えられないという事態になりがちです。その結果,期日を重ねて離婚調停が長期化してしまうと,体力的にも精神的にも疲弊してしまいます。

とりわけ,離婚調停成立後にどのようなトラブルが起きるのかを予測したり,離婚調停不成立後の離婚裁判での有利不利をふまえて対応したりすることは,弁護士のアドバイスがなければ,実際には難しいかもしれません。

 

当事務所には離婚問題に明るい弁護士が在籍しております。

離婚成立後に生じる可能性のある法的トラブルの芽を摘み,ご自身が納得できる条件で離婚を成立させて,安心して新生活のスタートを切るためにも,一度,弁護士にご相談されることをお奨めします。



監修者:
弁護士法人西村綜合法律事務所 代表弁護士 西村啓聡

[経歴]
東京大学卒業
第2東京弁護士会登録、岡山弁護士会登録

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