協議離婚と調停離婚の違いとは?対応の判断に迷った時に考えるべきこと

離婚には、協議離婚・調停離婚・裁判離婚・審判離婚があります。

このうち、審判離婚は非常に珍しいケースであるため、現実にはほとんど起こり得ません。また、裁判離婚についても、調停を経由した上で利用される手続きであるため、離婚を検討する際は、最初に協議離婚か調停離婚、どちらを選ぶか判断することになります。

この記事では、協議離婚と調停離婚の違い、対応の判断に迷った時に考えるべきことについて説明させていただきます。

離婚の際にとれる3つの方法

冒頭でも触れたとおり、離婚には協議離婚と調停離婚の他に、裁判離婚と呼ばれる方法があります。それぞれどういった特徴があるのか、以下にて詳しく確認していきましょう。

協議離婚

協議離婚とは、夫婦が話し合いのみで離婚に合意し、成立した場合を指します。

離婚までがスピーディである反面、財産分与や子どもの養育費など、離婚に際して話し合われるべき事項について一切の取り決めがないまま離婚しているケースが散見されます。

後のトラブルに発展しやすいため、この方法を取る場合は注意が必要です。

調停離婚

調停離婚とは、裁判所の調停手続きにて離婚が成立した場合を指します。

調停の場には、裁判官の他に有識者である男女2名の調停委員が話し合いに立ち会うため、離婚に際して必要な話し合いを行った上で、離婚成立となるケースが多くなっています。

ただし、裁判所での手続きであるため、どうしても時間と手間がかかってしまいます。

裁判離婚

調停離婚の成立が難しい場合に、裁判手続きにて離婚が成立した場合を指します。

夫婦の離婚は、「調停前置主義」といって必ず調停手続きを経なければ裁判を申し立てることができません。調停が不成立となってしまい、どうしても離婚が成立しない場合に利用するのが裁判離婚となります。

協議離婚と調停離婚の違い

裁判離婚は調停を経る必要があることから、離婚を検討した際に取れる選択肢は、協議離婚か調停離婚の2つです。そして、協議離婚と調停離婚の違いは主に以下の4つです。

  1. 立会人の有無
  2. 離婚までの期間
  3. 離婚届の提出
  4. 戸籍への記載

違いについて説明する前に、協議離婚と調停離婚の割合についても触れてみましょう。

協議離婚と調停離婚の割合

日本における協議離婚の割合は、およそ9割となっていて、ほとんどの方が夫婦間の話し合いによる離婚を選択しています。この理由の多くは、調停の利用はどうしても手間に感じてしまいますし、なにより時間がかかってしまう点にあります。また、そもそも裁判所での手続きを身近に感じていない、という点も理由の1つと言えるでしょう。

では実際問題、協議離婚と調停離婚はどちらを利用すべきなのでしょうか?

まずは以下の4つの違いについて、しっかり理解することからはじめてみましょう。

違い①:立会人の有無

調停離婚の場合、裁判所から選任された調停委員が話し合いに立ち会うことになっています。この調停委員というのは、地域の有識者のことで、原則的には40歳以上70歳未満の弁護士や司法書士、公認会計士といった有資格者、大学教授や小学校の校長などその地域で幅広く活動してきた方が選任されています。調停の場では、この調停委員が主な進行を務め、中立的な立場から双方が冷静に話し合えるような提案を数多くしてくれます。単に離婚の合意だけでなく、財産分与や慰謝料、子どもの親権や養育費、離婚後の生活など幅広い視野を持って話し合いをリードしてくれます。

一方で協議離婚の場合、友人や家族などの第三者を話し合いの立会人とすることは可能ですが、立会人自身が中立的な視点を持つのは簡単ではなく、また冷静な話し合いが実現しない可能性も強いです。特に、双方の主張が食い違い、話し合いが難航しているケースでは、友人や家族を立会人とするのは避けた方が良いでしょう。

違い②:離婚までの期間

協議離婚であれば、双方の合意さえあればその日のうちに離婚することが可能です。

一方で調停離婚の場合、双方の合意さえあれば離婚が可能な点は一緒ですが、離婚以外の点で揉めているのであれば、話し合い自体は継続されますし、調停そのものは1ヶ月に1度程度しか開かれないため、離婚成立までに時間がかかってしまいます。

どうしても離婚だけを先に成立させたいのであれば、協議離婚の後、財産分与や慰謝料、養育費についての調停を別途申し立てるという方法もあります。

ただし、子どもの親権については、協議離婚の場合でも離婚届提出時には必ず指定しなければならない点に注意です。親権者を指定せずに離婚はできないことになっています。

違い③:離婚届の提出

協議離婚の場合、離婚届を提出する際は証人2名の署名捺印が必須となります。証人になる条件は、成人していること、離婚の事実を知っていることの2つとなっていて、誰にでもなることが可能です。どうしても用意できない場合は、弁護士に依頼したり、証人代行サービスを利用するのも良いでしょう。

一方で調停離婚の場合、証人を用意する必要はありません。調停手続きが終了すると、裁判所から離婚の事実が記載された「調停調書」が作成されます。ここには離婚の事実だけでなく、その他の事項についても記載されていることから、離婚届提出の際は、離婚の事実のみを記した「調停調書省略謄本」を提出するのが一般的です。

なお、調停離婚の場合、離婚届は成立日から10日以内に提出しなければなりません。実際には、期限を過ぎたからといって離婚が無効になるわけではありませんが、あまり悪質な場合は過料という形で金銭の支払いを命じられる場合があるので注意しましょう。事前にどちらが離婚届を提出しにいくのか、話し合いで決めておくのが理想です。

違い④:戸籍への記載

協議離婚の場合は、離婚届の提出した日が離婚日とされ、戸籍にその事実が記載されます。市区町村役場によって若干の違いはあるものの、「○年○月○日 協議離婚届提出」といった記載になります。

一方で調停離婚の場合は、調停成立日が離婚日とされ、調停の成立日が戸籍に記載されることになっています。具体的には、「○年○月○日 離婚の調停成立日」といった記載です。

あまり気にされる方はいないかもしれませんが、次の婚姻相手に「調停までした=泥沼化した」と勘違いされたくないのであれば、本籍地を移す(転籍する)などして記載を消す方法はあります。事情に応じて対応するようにしましょう。

離婚の方法に迷ったら弁護士に相談を

協議離婚と調停離婚、どちらを利用すべきかについては、個々の事情によって異なると言わざるを得ません。離婚について双方の主張が食い違っているわけもなく、子どもの親権や養育費、財産分与や慰謝料などについても揉め事がないのであれば、時間や手間のかからない協議離婚が最適と言えるでしょう。一方で、双方の主張に食い違いが激しく、その他の事項についても争う姿勢があるならば、調停離婚を検討すべきです。

とはいえ、揉めている場合であっても弁護士の介入によってスピーディな協議離婚を成立させることは十分に可能です。離婚に際して必要な事項については、調停調書ではなく「離婚協議書」といった形で書面化することも可能です。

もし、離婚の方法に迷ったときは、一度弁護士に相談してみることを強くおすすめします。



監修者:弁護士法人西村綜合法律事務所 代表弁護士 西村啓聡
[経歴]
東京大学卒業
第2東京弁護士会登録、岡山弁護士会登録

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