養育費や財産分与が未払いなら強制執行できるかも!離婚における差し押さえを解説
あなたがお金を返してくれない知人を訴え、裁判所があなたの言い分を認めてくれたとしましょう。でも、それでも知人があなたにお金を返さないとしたらどうでしょうか。
…え?「判決書を水戸黄門の印籠よろしく知人に突き付け、無理やり財布を持っていく」ですか?なるほど、きっとあなたは数時間後には強盗の被疑事実で逮捕されていることでしょう。なぜならば、たとえ請求できる権利をもっていても、相手がその義務を履行しようとしない場合に自分で実力行使することは許されていないからです(これを「自力救済の禁止」といいます。)これが現在の法であり、公の権力によらなければ自分の権利を実現することはできないのです。
目次
そもそも強制執行ってなに?
「裁判所に言い分を認めてもらったからといって、無理やりお金を回収しようとすれば逮捕される。一体どうすればいいんだ!」…そんな声が聞こえてきそうですが、大丈夫です。あなたの権利を実現するための手段はきちんと用意されています。「強制執行」や「差し押さえ」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。これこそが、あなたの権利を実現するために用意された手段なのです。
なお、「強制執行」と「差し押さえ」の関係ですが、「強制執行」にはいくつか種類があり、その中に「差し押さえ」という執行方法があると考えてください。もっとも、このコラムですべての執行方法に言及することはできないので、今回は「差し押さえ」という執行方法についてご説明致します(さらに言うと、「差し押さえ」にも色々と種類があるのですが、それはまた別の機会に)。
差し押さえって、どういう手続き?
ざっくりと申し上げると、「相手から強制的に財産を取り上げ、権利を実現する手続き」ということになります。
…え?「じゃあ自分が知人から財布を奪うのも、それで権利を実現できるのだから『差し押さえ』にあたるじゃないか!」ですか?大事なことなので何度も申し上げますが、わが国では自力救済は禁止されています。
ここでポイントなのが、「権利を実現する手続き」という点です。つまり、自分で勝手に相手の財産を奪うのではなく、裁判所の許可を得て、裁判所の主導のもとに相手の財産を取り上げ、そこから債権を回収するというプロセスを経る必要があるのです。
差し押さえには、何が必要?
きちんと手続きを踏んで差し押さえを行えば、たとえ知人が支払いを拒んでも、あなたは強制的に知人の財産を取り上げてお金を回収することができます。
「そうとわかれば、早速裁判所に頼み込んで知人の財産を差し押さえてもらおう!」
…ちょっと待ってください。差し押さえは非常に強力な制度のため、厳密にそのための条件が定められています。
差し押さえ(強制執行の手段)のポイント
差し押さえに必要なもの・ことは、大きく次の3つに分けられます。
① 債務名義
② 差し押さえの対象となる財産の特定
③ 裁判所の許可
以下、順番に見ていきます。
債務名義
度々申し上げますが、わが国では自力救済は許されていません。実力行使して知人から財布を取り上げようものなら、強盗罪という財産犯として処罰される可能性があります。つまり財産を差し押さえるというのは、差し押さえを受ける人の財産権を侵害するものなのです。したがってその侵害行為が許されるには、差し押さえを行おうとする人が、「間違いなく自分は実現すべき権利を持っているのだ!」と証明しなければなりません。ではどうやってそれを証明するのか、というところで、「債務名義」が登場します。
「債務名義」と言われてもピンとこない方がほとんどかと思います。何が「債務名義」にあたるかは法律で定められているのですが、裁判をした結果得た判決書や、和解調書、調停調書などがそれにあたります。誤解を恐れずに言えば、「公的なお墨付きのある書類」ということになりますね。
差し押さえの対象となる財産の特定
「自分は裁判所に言い分を認められ、債務名義となる判決書も手元にあるから大丈夫だ!」…残念ながら、まだ足りません。「差し押さえ」というからには、「何を」差し押さえるか、そしてそれが「どこにあるか」が問題となりますよね。…え?「そんなの裁判所が調べればいいじゃん」ですか?残念ながら、それらを特定するのはあなたの仕事です。あなたが裁判所に対して、「どこにある」「どの財産を」差し押さえてほしいのかを説明委しなければならないのです。なんでも裁判所任せということはできません。
差し押さえの対象を特定しなければならないということは、裏を返せば、いくら裁判所があなたの権利を認めてくれたとしても、相手の財産が何も見つけられなければ差し押さえを実行することができないということになります。
たとえば件の知人のケースで、そもそもその知人に財産が存在しないとか、どこに財産があるかわからないといった場合、差し押さえが不可能となるケースも少なくありません。できれば、普段から財産状況を把握できているのが理想ですが、なかなか難しいことだと思います。
裁判所の許可
以上の2つの条件をクリアした場合、それをもとに裁判所に差し押さえの申立てをおこないます。
申し立てには、添付資料や手数料などに関する細かいルールがあり、差し押さえの種類によってその内容も異なりますので、専門知識のない方が自分で行うのは難しいでしょう。また、どのような差し押さえの手続きを利用するかなどについては専門的な判断も必要になります。
債務名義ごとの強制執行の流れについて解説
強制執行は、ご相談者様が裁判所の判決や和解調書といった「債務名義」を基に、自分の権利を実現するための法的手段です。しかし、債務名義の種類によってその手続きや実現方法が異なるため、適切な対応を取ることが重要です。ここでは、代表的なケースごとに強制執行の流れをご説明します。
面会交流の強制執行
親権者でない親が子どもとの面会を希望する場合、裁判所の決定を基に面会交流を実現できます。
面会交流は、親子の関係を維持するために重要ですが、もう一方の親が拒否している場合には、裁判所の決定や和解調書を基に強制執行が行われることがあります。例えば、特定の日に子どもを一定の場所に連れてくる義務がある場合、履行がなされなければ裁判所を通じて履行勧告が行われます。それでも従わない場合には、「間接強制」という形で金銭的な制裁を課しながら履行を促すことが可能です。
注意点
ただし、面会交流の強制執行には子どもの福祉が最優先されるため、裁判所が状況を慎重に判断します。無理やり連れてくるような方法は取られません。このため、適切なアプローチや専門家のアドバイスを受けることが成功への鍵となります。
財産分与の強制執行
財産分与が決定されたにも関わらず、相手が履行しない場合、強制執行が可能です。
例えば、不動産や預貯金の分割が命じられているのに相手が協力しない場合、裁判所の決定を基に財産の差し押さえや売却を進めることができます。具体的には、以下の手順を踏みます。
- 債務名義の取得
財産分与に関する判決書や和解調書を取得します。 - 対象財産の特定
不動産の登記事項証明書や銀行口座の詳細など、対象財産を特定するための情報を集めます。 - 差し押さえの申立て
裁判所に申立てを行い、差し押さえの執行手続きを開始します。
ポイント
財産分与における強制執行では、相手の財産状況を正確に把握しておくことが重要です。財産調査の段階から弁護士の協力を得ることで、効率的に解決へ進むことが期待できます。
養育費の強制執行
養育費が未払いの場合、給与や預貯金を差し押さえることで強制的に支払わせることが可能です。
養育費は子どもの生活を支えるための重要な費用ですが、未払い問題が発生することも少なくありません。こうした場合には、以下の手続きを進めることになります。
- 債務名義の取得
養育費についての調停調書や判決書を用意します。 - 差し押さえの申立て
裁判所に申立てを行い、給与や銀行口座の差し押さえを実施します。相手の勤務先や口座情報を特定することが必要です。 - 継続的な執行
養育費は継続的な支払いが必要なため、毎月一定額を差し押さえる手続きが行われるケースもあります。
注意点
養育費の支払い義務者が収入を隠したり、口座を移動させる場合も考えられます。そのため、弁護士のサポートを得て迅速かつ適切な対応を進めることが重要です。
まとめ
以上、差し押さえに関してかなりおおまかな説明をさせていただきました。差し押さえは権利実現、債権回収の最後の手段ではありますが、最初からそれを念頭において手続きを進める必要があります。たとえば、交渉の段階から、差し押さえのために必要な資料を集めたり、差し押さえに必要な情報を引き出しておくなどです。そういった工夫により、最終的に差し押さえを行った場合の成功率が大きく左右されることになります。
当事務所ではさまざまな種類の差し押さえを数多く手掛けてきました。差し押さえを検討されている方は、遠慮なくご相談ください。
監修者: 弁護士法人西村綜合法律事務所 代表弁護士 西村啓聡 [経歴] ![]() 東京大学卒業 第2東京弁護士会登録、岡山弁護士会登録 [ご相談者の皆様へ] 離婚のご相談は,皆様にとって人生の岐路となる重大な問題です。数多くの離婚問題を解決してきた経験をもとに,皆さまにとって最善の方法を提案させていただきます。 |
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