モラハラについて

モラルハラスメント(モラハラ)とは,言葉や態度を用いて相手の人格をおとしめ,精神的に虐待することをいい,精神的なDV(ドメスティックバイオレンス)の一種と定義されています。もっと簡単にいうと,家庭内での「いじめ」のようなものともいえます。

近年,モラハラに対する認知度は上昇しつつあるものの,身体的暴力(DV)とは異なり,目に見える傷のないモラハラ被害に対する周囲の理解はまだまだ不十分です。

また,モラハラ被害者自身も自分が悪いのだと考えてしまい,1人で悩んで孤立しがちです。そして,そのような状況が加害者の行為をエスカレートさせていきます。

モラハラは「目に見えない暴力」です。
モラハラによるストレスが蓄積していくと,無力感やイライラ感,不眠や食欲不振といった初期症状に始まり,さらに症状が進行すると抑うつ状態や精神疾患を発症し,被害者は心身に重大なダメージを受ける可能性があります。
そのため,モラハラ被害にあわれている方は,早めに適切な専門家に相談し,対処することが重要になってきます。

なお,以下では,モラハラ夫と被害者である妻という関係性を念頭に記述しておりますが,実際には妻から夫に対するモラハラが疑われるケースも少なくありません。モラハラは夫と妻のいずれもが加害者になる可能性があります。

 

モラハラ夫の特徴

モラハラを離婚原因とする離婚は近年増加傾向にあります。

モラハラで深刻な状況とならないためには,まずは,ご自身がモラハラ被害者であるということに気が付くことが重要です。

モラハラ夫には,以下のような共通する特徴があります。

 

結婚するまでは,優しくて親切

モラハラ夫は,相手の人格を否定し続けることで相手に「自分は無力な人間である」と洗脳し,被害者をコントロールします。具体的には,被害者である妻が妊娠や出産を機に退職するなど,経済的にも精神的にも加害者と離れがたい状況になった途端に豹変し,そのような立場を利用して相手を支配し,劣等感を植え付けてきます。

 

世間体は良いが,裏の顔がある

モラハラ夫は人間関係を「強さ」と「損得勘定」で判断し,格上の人間に対しては下手に出る反面,格下の弱い人間に対してはとことん横暴な振る舞いをします。そして,周囲からの評価をとても気にする加害者は,外では進んで「いい人」,「立派な人」を演じますが,自分より格下であると判断したパートナーに対しては,家の中で相手の尊厳を傷つける行動に出ることで,外で溜まったストレスを発散します。

 

突然怒ったり,いきなり無視をはじめたりする

モラハラ夫は、自分の要求を押し通すために,自分の要求が通らなければ無視や無言を長時間続け,家中の物に当たり散らすなどして態度で怒っている雰囲気を作り出します。また,定期的に理不尽に怒り出し,夫婦関係において自分が優位な立場にいることを知らしめようとします。

この時,妻が話し合いをしようとしても,自己の欲求を言葉ではっきりと説明することはなく,理不尽に怒鳴りつけたり,無視を続けたりするため,建設的な会話が成り立ちません。

 

何もかも人のせいにする

モラハラ夫はプライドが高く,自分を特別な人物だと思っています。そのため,家庭内で何か問題が起こっても,被害者(妻)のせいにし,責任転嫁します。たとえ,自分が浮気をしたとしても,妻に原因があるなどと強弁して話をすり替え,いつまでも自分の非を認めません。

 

本当はいい人で,被害者(妻)に加害者(夫)を怒らせる原因があるのだと信じ込ませる

モラハラ夫は頭が良く,相手の心を操作して他人を利用することに長けています。そのため,無視を続けていたと思えば,うって変わって,モラハラが始まる前以前のように優しく接したり,過去のモラハラ行為について謝罪したりすることがあります。このような穏やかな態度を見せることで,モラハラ夫は被害者(妻)に,「夫は,本当はいい人。自分が悪かったのだ。」と思い込ませることで,被害者(妻)を支配し続けようとします。

 

モラハラ環境で育った

モラハラ夫自身がモラハラ環境で育った場合,家庭内で上に挙げたような言動をとるのが普通のことだと思っているケースもあります。自分の父親が母親や自分にしていたことを,今度は妻や子供に対してしているといえます。

 

専門家に早めにご相談を

上に挙げたようなモラハラ夫と特徴に当てはまるなど,相手の言動によって,離婚を考えるほど苦しんでいる方がすべきことは,早い段階で,適切な第三者に相談することです。

 

直接,モラハラ夫と対等に交渉することは現実的には難しいでしょう。

自分自身の劣等感やストレスを発散するために,パートナー(妻)を支配・利用するモラハラ夫は,そのような自分にとって都合の良い相手(妻)をずっと支配下に置いておきたいと考えます。また,モラハラ夫は,被害者(妻)を苦しめているという自覚が乏しく,そもそも夫婦関係に問題があると感じていない場合も多いです。

そのため,モラハラ夫に離婚を切り出しても,あの手この手で言いくるめられ,「やっぱり自分が悪かったのだ」という罪悪感をもたされてしまい,事態が進展しない可能性が高いです。

また,モラハラ夫は,外面は良いため,周囲の人に相談しても,モラハラに対する理解が乏しい場合には,「大げさじゃない?」,「夫婦なんてそんなものでしょ。」などと言われて理解されず,被害者は自分を責めて我慢する結果となり,適切な解決からかえって遠のいてしまうおそれもあります。

そのため,モラハラ被害にあわれている方は,一人で悩まず,事態が深刻化する前に,モラハラに精通した専門家に相談することが大切です。

 

モラハラ夫と距離をおく

モラハラ夫との離婚を考えている場合には,まずは別居をすることで,加害者と物理的な距離を置くことが大切です。

上に挙げたように,モラハラ被害者(妻)は、家庭内という閉鎖的な空間の中で繰り返し尊厳を傷つけられるような行動を取られてしまった結果,自分は無力であり,価値のない人間だと思い込んでしまっています。そのようなモラハラ被害者(妻)は,「自分を傷つけている人間から離れるべき」という当然の判断もできないような状況に追い込まれていることも少なからずあります。また,モラハラ夫に対する恐怖心や不安から,別居するという選択に踏み切れない場合もあります。

このような場合,まずは,別居することでモラハラ夫と距離を置き,冷静な判断ができるような状態まで心身を回復させることが重要です。

離婚を見据えて別居をする場合,別居することを相手に伝えるべきかどうかとか,必要な持ち物とか、別居前にしておく必要のある離婚に向けた準備はなにかなど、いろいろなことが気になるかと思います。

一度弁護士に依頼すれば、そういった点についても相談することができるため,別居前の早い段階で依頼することをお勧めします。

 

離婚手続きについて

別居した後には,モラハラ加害者と,離婚条件について交渉することが必要です。

まず,前提として,離婚には3種類の手続きがあります。

協議離婚

②調停離婚

③裁判離婚

 

協議離婚(①)は,夫と妻の双方に離婚する意思があれば、家庭裁判所の関与なく,夫婦の話し合いで離婚の合意をして,離婚届を役所に提出することで離婚が成立するというものです。

調停離婚(②)は,当事者同士の話し合いだけでは離婚がまとまらない場合に,家庭裁判所が選任した調停委員に間に入ってもらい,中立的な立場の意見も取り入れて離婚の話し合いをまとめ,そこで合意に達した場合に成立するというものです。

そして,裁判離婚(③)は、調停離婚でも話がまとまらなかった場合に,家庭裁判所に離婚訴訟を起こし,裁判所が下した判決により離婚を成立させるというものです。

 

離婚する場合,当事者同士では,感情的になってしまい話し合いにならないことが多いため,代理人である弁護士に依頼することが望ましいです。

それに加え,とりわけ,モラハラによる離婚の場合は,次の理由から,弁護士に依頼することが重要といえます。

 

モラハラによる離婚のポイント

先に述べたように,モラハラ被害者(妻)は,加害者に対する恐怖心から,モラハラ夫と直接,対等に話し合うこと自体が難しい場合があります。この場合,①協議離婚を成立させることは現実的な選択肢にはなりません。

 

次に,②調停離婚の場合も,モラハラに対する世間の認知度が低いことから,調停委員がモラハラを正しく理解していないために,被害者に離婚を考え直すように説得にかかるという可能性も考えられます。

それに加え,モラハラ夫は,その外面の良さから,周囲に自分は「良い人」であると印象付けることに長けているため,調停委員に好印象を与える場合も多いです。

このような場合,被害者は二次被害によってさらにダメージを受けますし,仮に調停離婚が成立するとしても,モラハラ夫とのパワーバランスや法律面での知識不足から,自身にとって不利な合意を強いられる可能性もあります。

 

最後に,③裁判離婚に進んだ場合には,他の記事で書いてある通り,モラハラを離婚理由として離婚するには,相手の言動が,誰が見てもモラハラであると認めざるを得ないような証拠を提出することが重要になってきます。

モラハラ夫は,自分がモラハラをパートナー(妻)に対して行っているという自覚に乏しく,離婚に応じない場合が多いです。その場合,被害者側が,モラハラがあったという証拠を主張立証していく必要があります。

しかし,心の傷となるモラハラは,身体的暴力と違って目に見える怪我の写真や診断書などで立証することが難しいです。

そのため,モラハラによる離婚の場合には,法律の専門家であり,交渉のプロである弁護士に依頼することで,問題を解決していくことが重要です。実際に,モラハラを離婚理由とする離婚裁判の場合には,モラハラの証拠を立証することができれば,相手の有責性は顕著なため,裁判所が離婚を認めるケースが多いといえます。

モラハラ夫との離婚を成立させるためには,相当のエネルギーと時間が必要になります。

モラハラ夫との離婚の話は,被害者の方が,直接加害者と接触をする必要なく対等な立場から進めていくことができるよう,信頼できる第三者である弁護士に相談することが望ましいです。

モラハラによる離婚の場合には,モラハラ被害の影響で,メンタル面に不調を抱える方が少なくない傾向にあります。このような場合には、法律の知識だけでは十分なサポートを行うことができません。

私たちは,心理面のサポートも離婚問題解決には重要であると考え,このような方々をケアするため、心理カウンセラー等と連携しています。

 

最後に

モラハラの被害者には,相手の顔色をうかがい,相手に気遣いをしてしまいがちで,「自分さえ我慢すれば大丈夫」などと考えてしまう我慢強い性格の方が多いです。しかし,モラハラは「目に見えない暴力」であり,被害者はモラハラ被害による正当な権利を行使することができます。

パートナーのモラハラに悩んでいる方は,独りで悩まずに,,現在の状況がモラハラと認定されて,離婚請求や慰謝料請求ができるか否か,まずは専門家に相談してみることをお勧めします。

 

 

 

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