調停離婚を申し立てたい場合
目次
離婚調停を申し立てるタイミング
離婚調停の特徴を踏まえた上で,離婚したいという希望を実現する話し合いの方法として,協議離婚よりも離婚調停を申し立てるほうがより適当と判断できるときが,離婚調停を申し立てるべきタイミングとなります。
具体的には,以下のような場合には,離婚協議よりも離婚調停に移行したほうが一般的に良いといえます。
相手と直接離婚の話し合いができない、又は、相手が離婚に強く反対している
・感情的になり,冷静になってお互いの条件などを話し合うことができない
・暴力や暴言を受ける恐怖から,相手に離婚を切り出すことができない
・離婚したいことを伝えたにもかかわらず,その話についてうやむやにされる
このような場合には,離婚協議が停滞してしまいがちになります。
離婚調停であれば,原則として当事者本人,又は代理人である弁護士が,調停委員に間に入ってもらったうえで,話し合いを進めていきます。直接相手方に話をしなくてもよくなる上,第三者が間に入るため,直接当事者間で話し合いをするよりも,相手が感情的になることは比較的少なくなり,協議が進展しやすくなる傾向にあります。
もっとも,相手方が調停を欠席した場合には,調停離婚で話し合いを進めることはできなくなります。しかし,そのような場合でも,調停前置を経た以上離婚訴訟に進めることができるようになりますし,離婚訴訟の際には,それらの事情も考慮され,離婚を認める判決につながりやすくなります。
相手と別居をしているが、婚姻費用が支払われていない
婚姻費用とは,一般的には「生活費」と呼ばれる,夫婦の共同生活を維持するためにかかる一切の費用をいいます。具体的には、衣食住にかかる費用、交際費、医療費、子供の養育費等のことを指します。
民法上,夫婦の資産,収入その他一切の事情を考慮して,結婚生活から生じる費用を夫婦で分担すると規定されています。そのため,離婚前の別居中,離婚の協議中,離婚調停中,離婚訴訟中であったとしても,夫婦は同程度の生活を続けるために,お互いを扶養する義務があります。
そこで,離婚が決着するまで,一般的に,収入の少ない側から収入の多い側に対し,婚姻費用の支払いを請求することができます。
当事者間での協議によって婚姻費用の支払いの合意ができない場合や,相手が任意に婚姻費用を支払わない場合には.家庭裁判所に婚姻費用分担調停を申し立てることができます。さらに,調停でも相手が婚姻費用の支払いに応じない場合は,裁判所が婚姻費用の支払いを命じる審判を出すことになります。
もっとも,婚姻費用の審判では,裁判所は申立後から離婚成立までの期間に発生する婚姻費用に関しては関与するものの,申立以前の婚姻費用に関しては支払を強制することはなく,申立て以前の婚姻費用の支払いが遡って認められることは,ほとんどありません。
そのため,別居後,相手から婚姻費用を受け取っておらず,婚姻費用分担調停の申立ても行っていないという方は,少しでも多くの婚姻費用を確保するために,速やかに調停の申立て手続きを行うことをお奨めします。
親権に争いがあり、相手に子供を連れ去られる可能性がある
離婚後は,夫婦のいずれか一方のみが未成年の子どもの親権者になります。また,未成年の子どもの親権者をどちらにするか決めない限りは,離婚をすることができません。
そのため,夫婦双方が子どもの親権を主張して譲らない場合には,協議が停滞することになります。
このような場合,離婚調停に移行すれば,両親のうちのどちらが親権者として適切かを判断するために,家庭裁判所調査官が調査を行うことができます。その結果,親権の争いが収束し,離婚の協議をスムーズにまとめることができるようになります。
さらに,調停の申立てにより裁判所が協議に関与するため,相手が子どもを連れ去るおそれがある場合にも,相手の自分本位な行動を可能な限り減らすという観点から,離婚調停の申立てをすることをお奨めします。
相手の財産がわからない、相手が財産開示に応じてくれない
当事者間の協議では,相手が財産開示に応じない場合,相手の財産の内容を知る方法はありません。
他方で,調停手続では,調停委員から両当事者に対し,財産の開示を要求することができるため,相手が任意に財産を開示する可能性が高くなります。また,調停手続では,調査嘱託といって,裁判所を通じて情報を開示させることもできます。
相手の財産を把握することは,適正な慰謝料額,養育費,財産分与の額を受け取るために必要不可欠な情報です。
したがって,このような場合にも,離婚調停を申し立てることをお奨めします。
別居の時期
離婚調停において,現在の同居・別居による有利・不利はありません。離婚調停を行う際には,同居よりも別居のほうが,どちらかというと早く終わりやすいと言われています。もっとも,調停に先立って別居しておかなければならないということはなく,実際に同居しながら離婚調停をするケースもあります。
しかし,離婚を望むに至るほど相手と一緒にいるのが苦痛なのでしょうから,離婚調停をしている相手と一緒に生活を続けるのは,現実的にはかなり気まずく,ストレスにもなるでしょう。
このような事情から,離婚調停に先立って,別居する方が多い傾向にあります。
夫婦には同居義務がある以上、別居の理由は離婚調停において大きな意味を持ちます。また,別居開始時の状況が子どもの親権者の決定にあたって大きく影響する場合もあります。
このように,離婚調停中に別居したほうが有利な場合と不利な場合があり,これはご自身の状況によって異なります。
離婚調停中に別居するべきか同居するべきかについては,個別具体的状況に応じた慎重な判断が必要となるため,別居を検討されている方は,まずは弁護士に相談されることをお奨めします。
監修者: 弁護士法人西村綜合法律事務所 代表弁護士 西村啓聡 [経歴] 東京大学卒業 第2東京弁護士会登録、岡山弁護士会登録 [ご相談者の皆様へ] 離婚のご相談は,皆様にとって人生の岐路となる重大な問題です。数多くの離婚問題を解決してきた経験をもとに,皆さまにとって最善の方法を提案させていただきます。 |