熟年離婚を検討する際に知っておくべき年金分割と必要な準備について
夫婦が離婚する場合、婚姻期間中に築いた財産は共有財産として、どのように分配するかを話し合うことになり、これを財産分与といいます。
この財産分与の対象には、年金も含まれています。特に、専業主婦(主夫)だった方、熟年離婚をするという方にとっては、ご自身の年金がどのように扱われるのか、老後に受け取れる年金はどうなるのか、そんな疑問や不安を抱えているのではないでしょうか?
そこで今回は、熟年離婚を検討する際に知っておくべき年金分割と、そのために必要な準備について解説していきます。
目次
離婚時の年金分割
婚姻期間中に支払われてきた厚生年金は、離婚時に夫婦2人で分割することが可能となっていて、これを「年金分割制度」といいます。たとえば、夫側が厚生年金に加入していて、妻側が加入していなかったとしても、婚姻期間中に夫名義で支払われた厚生年金は、離婚時にすべて妻側に分割されます。また、妻側が加入していたとしても、夫側で支払われていた厚生年金の保険料納付記録が多い場合、多いほうから少ないほうへと分割される、つまりは夫側から妻側に分割される、というのが年金分割制度の仕組みです。
年金分割の種類
年金分割には、「合意分割」と「3号分割」という2種類があります。
それぞれ下記にて詳しく見ていきましょう。
合意分割
合意分割とは、分割の割合を2人で話し合い、双方の合意を基に割合を決定する方法です。
分割する際に特にこれといった条件はなく、夫婦の一方が専業主婦(主夫)であっても利用可能な分割方法です。もし話し合いでの合意がまとまらなかった場合は、後述するように家庭裁判所に申し立てることで調停や審判にて割合を決定します。
3号分割
3号分割とは、厚生年金に加入している会社員、公務員の配偶者で国民年金保険の第3号被保険者に該当する専業主婦(主夫)や、パート勤務をしている方のみが選択できる分割方法です。第3号被保険者が対象のため、3号分割と呼ばれています。
・第1号被保険者=第2号、第3号以外の被保険者
・第2号被保険者=国民年金(老齢基礎年金)+厚生年金(老齢厚生年金)を受給
・第3号被保険者=国民年金(老齢基礎年金)のみを受給
なお、3号分割の場合は夫婦間の合意は必要なく、「年金分割を受けたい側」が手続きをすることで、婚姻期間中の保険料納付記録の2分の1を分割することができます。
合意分割の際の注意点
合意分割する際は以下の3点に気を付けましょう。
年金分割の請求期限
離婚した翌日から2年間という期限が定められている点です。2年の経過で請求できなくなってしまうため、年金分割を検討している方は注意しましょう。
事実婚であっても請求可能
婚姻関係がなく事実婚であっても、年金分割することは可能です。ただし、夫婦いずれかが第3号被保険者であった期間と、事実婚を証明できる資料が必要です。
合意分割の上限は2分の1
3号分割については2分の1が原則的な割合となっていますが、合意分割の上限も2分の1までとなっています。これ以上の分割割合を求めることはできません。
合意分割におけるケース別整理
合意分割の場合は、以下のいずれかを用いて最終的な割合を決定します。
夫婦間の話し合いによる合意
まずは、夫婦間の話し合いによって割合を決めることが可能です。
合意がまとまった場合は、当事者双方または代理人が、年金分割の合意内容を記載した書面を年金事務所の窓口に持参します。または、合意内容等がわかる公正証書の謄本もしくは抄本、または公証人の認証を受けた証書を提出することでも受け付けてもらえます。
しかし、なんらかの事情で話し合いによる合意ができない場合や、割合について争いがある場合は、調停や審判、訴訟によって合意割合を決定しなければなりません。
調停による場合
調停による場合は、離婚調停に付随して割合を決めることが可能です。
離婚調停時に年金分割について請求していなかった場合は、離婚成立後に年金分割についてのみの調停を申し立てることが可能です。
審判による場合
離婚時に年金分割の合意ができていなかった場合や、調停が不成立になった場合は自動的に審判へと移行することになります。審判とは、裁判官が自動的に決断を下す制度のことで、一般的には2分の1ずつとなるケースが多くなっています。
離婚訴訟における附帯処分の手続
離婚調停が不成立となってしまった場合、次は離婚訴訟を提起することになります。通常、離婚問題については自動的に審判へと移行するケースは稀となっています。
そして、離婚訴訟の際は、年金分割の割合について「附帯処分」という形で請求することが可能です。いずれの場合も、請求期限である2年間に注意にしてください。
熟年離婚を検討される場合にはまず弁護士にご相談ください
熟年離婚において、年金分割はどうしても気になってしまう項目です。嫌でも老後を意識せざるを得ないことからも、年金分割は必ず請求するようにしてください。とはいえ、熟年離婚では年金分割だけが争点になるわけではありません。婚姻期間が長ければ長いほど、築き上げた財産は大きなものとなります。預貯金や不動産、有価証券や保険など、分割の対象になるのは年金だけではありません。しかし、対象の多い財産分与は隠匿されたり、見逃しがあったりと、決して簡単な手続きではありません。ご自身で行うことに自信がないという方は、損を招かないためにも弁護士への依頼を検討するのが良いでしょう。
当事務所においては、過去に何件も熟年離婚問題を解決へと導いてきた豊富な実績があります。どうかご安心してご相談いただけますと幸いです。
監修者: 弁護士法人西村綜合法律事務所 代表弁護士 西村啓聡 [経歴] 東京大学卒業 第2東京弁護士会登録、岡山弁護士会登録 [ご相談者の皆様へ] 離婚のご相談は,皆様にとって人生の岐路となる重大な問題です。数多くの離婚問題を解決してきた経験をもとに,皆さまにとって最善の方法を提案させていただきます。 |