別居後に受けられる金銭的サポートにはどんなものがある?
「離婚を視野に入れて別居を開始したい」「ただ,別居後の生活が経済面で不安だ・・・」と悩んでいる方も多いのではないでしょうか。しかし、公的制度や配偶者への請求などをうまく活用すれば金銭的に余裕のある状態で別居・離婚を検討することが可能です。
今回は、別居後に受けられる金銭的サポートについて,離婚前と離婚前に分けてご紹介します。
目次
離婚前に受けられるサポートは?
公的制度で受けられるサポート
①児童手当
児童手当は,原則,父母のうち所得の高い方が受給資格者となりますが,父母が離婚又は離婚協議中につき別居しており,生計を同じくしていない場合は,実際に子を監護養育している者に支給されます。
支給対象は,日本国内に住所を有する(留学中を除く)0歳から15歳に達する日以後最初の3月31日までにある子を監護養育する者です。
【支給額】
・0歳から3歳未満:(一律)月額15,000円
・3歳から小学校修了前(第1子・第2子):月額10,000円
・3歳から小学校修了前(第3子以降):月額15,000円
・中学生:(一律)月額10,000円
※所得制限基準額以上の場合
0歳から中学校修了前(一律):月額5,000円
②児童扶養手当
児童扶養手当は,父又は母のいない家庭や,実質的に父又は母が不在の状態にあるひとり親家庭に支給されます。支給対象は,18歳に達する日以後の3月31日までにある子又は20歳未満で一定の障害の状態にある子を監護養育する者です。もっとも,下記の支給要件を満たす必要があるため,児童扶養手当受給のハードルは高いといえます。
【支給要件】下記①~⑧のいずれかに該当する必要があります。
①父母が婚姻を解消した児童
②父又は母が死亡した児童
③父又は母が重度の障害を有する児童
④父又は母の生死が明らかでない児童
⑤父又は母に1年以上遺棄されている児童
⑥父又は母が裁判所からのDV保護命令を受けた児童
⑦父又は母が1年以上拘禁されている児童
⑧婚姻によらないで生まれた児童
【支給額】(全額支給の場合)
①児童1人のとき:月額4万3,160円
②児童2人目:月額1万190円
③児童3人目以降:1人につき月額6,110円
婚姻費用の請求
別居を開始した場合,離婚又は別居を解消するまでの間,配偶者に対して婚姻費用を請求出来る可能性があります。
婚姻費用とは,夫婦が共同生活を送るうえで必要となる生活費のことをいいます。夫婦には,同居義務があるほか,互いに協力して扶助する義務があります(民法752条)。そのため,婚姻費用についても,夫婦が相互に分担することになります。
婚姻費用の分担は,その資産,収入,その他一切の事情を考慮してその程度や内容を決める(民法760条)ので,通常,収入の多い夫(又は妻)から収入の少ない妻(又は夫)に対して金銭を支払う方法で行われます。
婚姻費用の請求方法
①交渉で夫(又は妻)と合意する
夫(又は妻)に対して婚姻費用の支払いを求め,夫(又は妻)がその支払いに応じてくれるようであれば,夫婦で合意した内容で婚姻費用を支払ってもらうことになります。
②調停又は審判を申し立てる
当事者間だけでは婚姻費用の話し合いが出来ないという場合には,家庭裁判所に婚姻費用分担の調停又は審判を申し立てることになります。
婚姻費用支払いの始期は,実務上,別居時ではなく婚姻費用分担調停や審判の申立時とされることが多いことから,相手方との交渉で婚姻費用支払いの合意が難しいという場合には,早期に調停や審判の申立てをされることをおすすめします。
婚姻費用請求する際のポイントや金額については下記の記事で詳しく解説しておりますのでご覧ください。
離婚後に受けられるサポートは?
養育費について
養育費とは,未成年の子が生活するために必要な費用をいいます。親は子に対して扶養義務を負っている(民法877条1項)ため,親権者であるか否かにかかわらず,養育費を支払わなければなりません。
子の生活費は,離婚前は「婚姻費用」として,離婚後は「養育費」として求めていくことになります。
養育費の請求方法
①交渉で夫(又は妻)と合意する
夫(又は妻)に対して養育費の支払いを求め,夫(又は妻)がその支払いに応じてくれるようであれば,夫婦で合意した内容で養育費を支払ってもらうことになります。なお,当事者間で養育費の取り決めをする場合,毎月の支払額や支払方法,支払期日,養育費の終期について後日疑義が生じないよう,きちんと決めておく必要があります。
また,養育費支払の履行を確保するために,強制執行認諾文言付きの公正証書にして取り決めておくことをおすすめします。
②調停又は審判を申し立てる
当事者間だけでは養育費の話し合いが出来ないという場合には,家庭裁判所に養育費分担の調停又は審判を申し立てることになります。
養育費支払いの始期は,婚姻費用同様,実務上,別居時ではなく養育費分担調停や審判の申立時とされることが多いため,相手方との交渉で養育費支払いの合意が難しいという場合には,早期に調停や審判の申立てをされることをおすすめします。
養育費について、子供に損をさせないポイントや相手が支払わない場合の対処については以下の記事で詳しく解説しておりますのでご覧ください。
公的制度
岡山市で設けられている公的制度を一部ご紹介します。
(※具体的な申請方法や手続については、役所等に確認をしてください。)
①児童手当
離婚前同様,支給対象は,日本国内に住所を有する(留学中を除く)0歳から15歳に達する日以後最初の3月31日までにある子を監護養育する方は児童手当を受給できる可能性があります。
②児童扶養手当
離婚後は,前述した【支給要件】の「①父母が婚姻を解消した児童」に該当するため,児童扶養手当を受給できる可能性があります。
③ひとり親家庭等医療費助成制度
予め受給資格者としての認定が必要になりますが,医療機関や薬局等の窓口に健康保険証とひとり親家庭等医療費受給資格証を提示することで,医療費の自己負担が一割になります。
【対象者】
岡山市に住所を有し,次のいずれかに該当する方
・18歳未満の児童を扶養しているひとり親家庭の親と児童
・18歳未満の父母のいない児童
・18歳未満の父母のいない児童を養育している配偶者のいない者
④子ども医療費助成制度
岡山市に住所を有し,健康保険に加入する中学生までの子が医療機関(薬局・訪問看護ステーションを含む)で受診した場合,医療費の自己負担額の一部又は全部が助成されます。
対象児童 | 外来 | 入院 |
---|---|---|
小学校就学前 | 自己負担なし | 自己負担なし |
小学生 | 1割(自己負担上限額44,400円/月) | 自己負担なし |
中学生 | 助成なし | 自己負担なし |
⑤就学援助
家族全員の合計所得金額が基準額以下の場合,又は児童扶養手当を受給している場合,申請により,公立小・中学校での学習に必要な学用品費や給食費,修学旅行費等の一部が支給されます。
⑥母子・父子・寡婦福祉資金貸付制度
就学支度金,医療介護資金,転宅資金,生活資金など様々な種類の貸付を受けることが出来ます。
【要件】
Ⅰ.貸付を受けることで経済的自立の助成と生活意欲の助長が図られること
Ⅱ.必ず償還する意思があり,確実な償還計画を立てられること
Ⅲ.配偶者のない女子もしくは男子で,次のいずれかに該当すること
<母子福祉資金>
・母子家庭の母(配偶者がおらず,現に20歳未満の児童を扶養している者)
・父母のいない児童(20歳未満)
<父子福祉資金>
・父子家庭の父(配偶者がおらず,現に20歳未満の児童を扶養している者)
<寡婦福祉資金>
・寡婦(配偶者のいない女子で,かつて母子家庭の母であった者)
・40歳以上の配偶者のない女子で,母子家庭の母及び寡婦以外の者
⑦生活福祉資金貸付制度
低所得世帯や,高齢者世帯・障害者世帯などに対して,民生委員の相談支援により貸付が行われます。
⑧公営住宅への優先入居
20歳未満の子を扶養する母子世帯・父子世帯が公営住宅への住居を希望する場合に,入居抽選での優遇措置があります。
⑨国民健康保険料の減免制度
国民健康保険に加入している世帯に児童扶養手当を受給している者がいる場合,国民健康保険料が減免されます。
⑩JR通勤定期の割引制度
児童扶養手当を受給している世帯や生活保護世帯でJRを通勤に利用している場合,通勤定期乗車券の割引がされます。
まとめ
これまで、別居したくても経済的な不安で踏み切れなかった方も多いのではないでしょうか。
今回ご紹介させていただいたように、公的制度や配偶者への請求などをうまく活用すれば金銭的に余裕のある状態で別居・離婚を検討することが可能です。
西村綜合法律事務所では離婚問題の経験・知識が豊富な弁護士が所属しておりますので、特に配偶者への請求がスムーズになる他、正確な金額を算出しご相談者様をサポートいたします。
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監修者: 弁護士法人西村綜合法律事務所 代表弁護士 西村啓聡 [経歴] 東京大学卒業 第2東京弁護士会登録、岡山弁護士会登録 [ご相談者の皆様へ] 離婚のご相談は,皆様にとって人生の岐路となる重大な問題です。数多くの離婚問題を解決してきた経験をもとに,皆さまにとって最善の方法を提案させていただきます。 |