離婚したら住宅ローンはどう分ける?弁護士が教える借金(ローン)を抱えている離婚の対処法4選
借金・ローンがある場合、相手に財産分与を求めることで、「自身も借金を背負わされてしまうのではないか?」といった不安を抱えている方は多いのではないでしょうか。
逆に、ご自身の名義で借金をしているという方は、「配偶者には離婚後も返済を負担してほしい」と考えている方も多いはずです。では、借金・ローンがある場合の財産分与はどのように取り扱うのでしょう?こちらは、離婚時に必ず知っておくべきことの1つです。
では、以下にて詳しく解説していきましょう。
目次
離婚時の借金・ローンに関する基礎知識
まず、離婚時の借金・ローンに関する基礎知識についてご説明していきます。
財産分与の対象となるもの ~積極財産って何?~
そもそも、離婚の際に財産分与の対象となるのはどのような財産なのでしょうか。
具体的には、預貯金、保険、株式、不動産などが対象となります。これらは金銭的価値のある財産であることから、「積極財産」と呼びます。
預貯金については、夫婦が共同で管理している口座があればわかりやすいですが、それ以外にも婚姻生活中に増えた個々の預貯金についても財産分与の対象です。保険に関しては積み立て型であれば、一般的には解約し、返戻金を財産分与の対象とします。同様に、株式といった売却できる性質のものは、現金にした後、財産分与するケースが多くなっています。自宅といった不動産についても同様です。ただし、オーバーローン(現在の売値より残債務のほうが多い状態)である場合は、後述のような取り扱いをします。
なお、相続などのように、婚姻生活とは関係のないところで増加した財産については、財産分与の対象外となるため注意しましょう。
借金・ローンの取り扱い ~返済義務はどう分ける?~
夫婦が生活をする上でした借金や自宅、共用の自動車のローンなどについては、原則として財産分与の対象となります。
借金やローンは、個人名義で借り入れることが多く、夫婦の一方が名義人となっているケースがほとんどです。一見すると、借入名義人だけが返済義務を負うように見えますし、実際、貸した側からすれば請求できるのは名義人に対してのみです。
しかし、夫婦や子どもの共同生活を営む上で、必要の上でした借金である以上、夫婦それぞれが負担すべき性質である考えられています。
つまりは、名義人でない側も返済を負担する可能性が十分にあるということです。ただし、共同生活と関係のない借金、個人のギャンブルや浪費といった理由の借金については、名義人でない側が負担する必要はありません。
借金・ローンがある場合の財産分与・清算方法
では、借金・ローンがある場合は、どのように清算すべきなのでしょうか?積極財産がある場合と、積極財産がない場合とに分けてご説明していきましょう。
ケース1:積極財産および借金(ローン)が両方ともある場合
積極財産がある場合は、そこから借金・ローンを優先して差し引くことになります。そして、積極財産が上回っているのであれば、残った部分が財産分与の対象になります。逆に下回っていた場合は、以下でご説明する積極財産がない場合と同様の取り扱いになります。
ケース2:積極財産は無いが、借金(ローン)を抱えている場合
積極財産がない場合、あったとしても債務超過となってしまう場合、残ってしまう借金・ローンについては財産分与することができません。
夫婦でした借金である以上、夫婦間で清算すべきというのはもっともですが、債務超過分に関しては借金の名義人に対してのみ支払い義務が生じることになっています。よって、債務超過分は財産分与の対象外です。
ただし、夫婦で連帯になっている借金は、離婚後も夫婦それぞれが支払い義務を負わねばなりません。離婚したからとって、連帯が解消されるわけではない点に注意です。連帯債務を解消したいのであれば、夫婦間の協議はもちろん、債権者側からの合意が必要になります。
借金・ローンを抱えての離婚時に注意すべきこと【弁護士監修】
上述のとおり、離婚時に借金・ローンが残ってしまう場合は、当然のように折半することはできません。借入名義人からすれば納得いかないのも無理はないため、離婚後のトラブルを防止する意味でも、借金の支払い方法について必ず話し合いをしておくべきです。可能であれば、離婚協議書、公証役場で公正証書を作成するのも良い方法と言えます。
どうしても話し合いがまとまらない場合は、以下の点を確認してみると良いでしょう。
①借金額の正確な把握
まずは借金額を正確に把握することからはじめてみましょう。そのためにも、自身名義の借金はもちろん、相手にも借金の資料をしっかりと開示してもらってください。
その上で、借金の内訳等を確認していきましょう。果たして夫婦として負担すべき借金なのかどうか、その点を踏まえた話し合いをするためにも、借金額の正確な把握というのは非常に重要です。口頭での確認だけでなく、裏付け資料も提出してもらいましょう。
②返済方法に関する協議
借金額を正確に把握することができたら、次は返済方法に関して協議しましょう。
もともと財産分与というのは、公平に行われるもので、2分の1が原則となっています。とはいえ、債務超過分となる借金の返済負担については、2分の1しなければならないわけではありません。そこで、双方が納得できる返済方法を協議するのが理想的と言えます。
③住宅ローンについては弁護士等を含めて相談
借金・ローンの中でも、住宅ローンに関しては非常に高額であり、話し合いは難航するケースが多くなっています。たとえば、離婚後も夫婦の一方が変わらず住み続ける場合は、ローンの名義を変更したり、リスケをしたりといった手続きが必要になります。
また、住宅を売却してローンを清算できるのであれば良いですが、前述したようなオーバーローンの場合は、揉めるケースが非常に多くなっています。協議が平行線となる恐れもあることから、住宅ローンがある方は弁護士等も含めて相談するようにしてください。
住宅ローンは誰が払う?離婚前に確認しておくべき家のこと
まず、離婚により今住んでいる家を離れる場合でも住宅ローンは支払い続ける必要があります。ここでは、離婚後は誰が住宅ローンを支払うのか、また離婚前に確認すべきことを説明します。
不動産の名義
不動産の名義人は住宅ローンの契約者である夫側だと考えていても、夫婦共有名義などの可能性もあるのでしっかりと確認しましょう。
ローンの名義人、住宅の残りのローン
夫だけがローンの名義人なのか、夫婦で連帯債務にして共同でローンを支払っているのか、誰が連帯保証人になっているのかなどの確認が必要です。
また、離婚後も夫婦のどちらかが住むのか、売却した方が良いのかなどを判断するためにもローンの残債を把握しておきましょう。
後述で詳細を説明しますが、ローンの名義人や連帯保証人は離婚後も継続されるので重要な確認ポイントです。
住宅の価値
ローンの残債にもよりますが、完済できるなら不動産の売却も検討できます。
しかし、完済できない場合は自己資金で補ったり任意売却したりと離婚後の生活にデメリットとなるケースもあるため、住宅の価値を確認してから売却か返済を続けるのかを検討しましょう。住宅の価値を調べるには、自宅周辺の間取りや築年数などが近い物件をネットの不動産会社の情報で確認したり、広告やチラシを見たりする方法があります。マンション物件なら同じ建物の別世帯が売りに出しているケースも少なくありません。
より確実に調べたいなら不動産一括査定サイトの利用を検討しましょう。複数の不動産会社が立地や間取りなどから簡易査定してくれます。不動産は売買が成立しない限り手数料は発生しないため、無料で査定を受けることが可能です。
住宅ローンの金額を養育費に含められる?
養育費には対象となる子どもが住む住居の家賃も含まれています。では、養育費を住宅ローンの支払いに含めることはできるのでしょうか。
ここでは養育費と住宅ローンの関係を説明します。
養育費をもらう人が住んでいる住宅のローンを養育費を支払う側が払う
養育費の目的は子どもの生活を支えるためであり、住宅ローンを支払う代わりに養育費の全額を返済に充てることは認められません。
しかし住居がオーバーローンのため財産分与で清算できず、妻と子どもが住み続け、別居する夫側が返済を継続していくことを前提に離婚をする場合は住宅ローンを養育費から控除できる可能性もあります。
養育費の算定するにあたりローンの返済額を特別経費として養育費から控除する方法です。これらの計算方法は複雑なため、弁護士などの専門家へ相談するのが良いでしょう。
また住宅ローンと養育費を支払っている場合、年収が大きく下がったなど経済的な理由で養育費を減額してもらえるケースもあります。この場合、まずは養育費を受け取っている側に相談しましょう。そして合意しない場合は調停を申し立て、減額を目指します。
養育費を支払う人が自分の住む住宅のローンを払う
養育費を支払う人が自分の住んでいる住宅ローンの返済を理由に養育費の減額などが考慮されることはありません。
養育費を支払う側の住宅ローンによって養育費を受け取る側の住居費の負担は減らないためです。
住宅ローンの残債は財産分与に含まれるの?
離婚の際には夫婦で財産分与するのが一般的で、現金、不動産、自動車、家電や家財道具、年金と保険、有価証券などが対象になります。
不動産も財産分与に含まれますが、その対象となる物件の住宅ローンはどのように扱われるのでしょうか。
負債となる住宅ローンは財産分与の必要なし
不動産は財産分与の対象ですが、住宅ローンの残債は財産分与の対象となりません。財産分与に負債は含まないためです。
したがって、例えばローン残債が2,000万円あるからといって、夫婦で1,000万円ずつ分与しそれぞれ支払っていくことはありません。
返済義務があるのは住宅ローンの名義人
離婚して不動産の名義が変わったとしても、金融機関で契約している住宅ローンの名義人は変わりません。そのため、離婚時の財産分与の有無に関わらず、返済義務があるのは住宅ローンの名義人となります。
例えば財産分与によって妻側に不動産名義が渡ったとしても、金融機関と契約しているローンの名義人が夫であった場合、支払い義務はローンの名義人の夫になるのです。
また、夫婦で連帯債務者となっている場合も継続して双方に支払い義務が継続され、例えば妻側が連帯保証人になっている場合も、ローン名義人である夫の支払いが滞った際には支払い義務が生じます。
連帯債務者と連帯保証人の違い
連帯債務者と連帯保証人にはどのような違いがあるのでしょうか。似ている言葉ですが意味は全く変わるため、住宅ローン契約で自分はどちらに指定されているのかなど確認しておきましょう。
連帯保証人はローン名義人の支払いが滞り返済不能となった場合に返済の義務が生じます。一方、連帯債務者は金融機関との契約時からローン名義人と同等の支払い義務があります。
したがって、連帯債務者であるなら離婚後もローン名義人と同等の支払い義務があり、離婚によってリスクになるケースも少なくありません。
前述したように、離婚によって不動産名義人が変わってもローン契約の内容が変わることはないので、連帯債務者から外してもらうことはほぼ不可能だと言えます。
自分が連帯債務者に指定されていることで不安を感じる場合、離婚前に配偶者へ相談してみること、弁護士と金融機関へ離婚後の支払いについて相談してみることをおすすめします。
参考までに、連帯債務者として契約するケースは、例えば共働きで双方に安定した収入がある場合、借入額を多くするために夫婦で連帯債務者としてローンを組みます。また、夫の収入だけではローン審査が通らない場合にも利用されることが多いです。
弁護士が教える!離婚後の住宅の扱い・対処法4選
ここでは持ち家で住宅ローンの残債がある状態で離婚する場合、どのような対処法があるのか、いくつかのパターンを紹介します。
不動産を売却してローンを払い続ける
不動産売却で問題となるのは住宅の価値がローンの残債を下回ることです。この場合、売却は難しいため夫婦のどちらかがローンを支払いながら住み続けることになるでしょう。
不動産売却で残債を一括返済できないことを「オーバーローン」一括返済可能なことを「アンダーローン」と言います。
・オーバーローン
売却価格で支払えないローンの残債を自己資金で補う必要があります。
一般的に不動産はローンを完済しなければ金融機関の抵当権が外れないため売却できません。そのため自己資金で補えない場合はローンを払い続ける必要があるのです。
しかし、金融機関の合意を得て売る「任意売却」という方法もあります。
任意売却のメリットは、競売ではないので市場価値に近い金額で売却できる、残債分の少ない金額でローンを組み直せる可能性がある、そのまま住み続けることもできる、競売のように所有者の経済状況が公表されないなどがあります。
一方で、住み続ける場合は家賃が発生すること、立地によっては買い主がなかなか見つからないことなどのデメリットも挙げられます。
・アンダーローン
住宅ローンの残債を上回って売却できるため、売却益分は財産分与することで解決できます。
しかし、売却せずに妻か夫のどちらかが住み続ける場合はローンの支払いはどちらが続けるのか、所有者はどちらにするのか、出ていく側に財産分与はあるのかなどデメリットになるケースもあります。
住宅ローンの名義人が住み続ける場合
例えば、夫が住宅ローンの名義人でそのまま住み続けるなら今まで通り支払いを続けるだけなので問題ありません。
しかし妻が連帯保証人になっている場合、離婚したからといって保証人を外すことはできないので注意が必要です。
住宅ローンの名義人でない人が住み続ける場合
例えば、夫が住宅ローン名義人のまま継続して返済し、妻が住み続けることは問題ありません。しかし夫の返済が滞った際には立ち退きなどのリスクがあります。
名義人を変更して、変更後の名義人が住み続ける
金融機関にローン名義人の変更を申し入れても了承は難しいと言えます。
その場合は公正証書とした離婚協議書などで「妻をローンの名義人に変更する」「ローン名義人は変更せず、妻側がローンを返済する」などの記載が必要です。
しかし妻側に経済力があると判断された場合、金融機関は名義人の変更に応じる可能性もあります。
住宅ローンの名義を変更する方法は?
個人への審査によって決定される住宅ローンの名義変更は基本的にできません。しかし元配偶者のすべてのローン残債を引き継ぎ、他の金融機関で借り換えをすることで新たな名義でローンを組める可能性もあります。
住宅ローンの借り換えを行うときの注意点
借り換えを行うには以下の条件を満たす必要があります。
・住宅ローンに関する内容が記載された離婚協議書などの記録があること
・借り換えする側が居住する住宅であること
・住宅の所有権を借り換えする側の単独名義にすること
もちろん上記条件を満たしていても年収や雇用形態などによる審査は行われるため、確実に借り換えられるわけではありません。
また、離婚による住宅ローン借り換えはすべての金融機関で取り扱いがあるわけではないので注意が必要です。
まとめ
離婚による住宅の対処やローンの名義変更、養育費との関連などお金に関することは複雑なことが多く分かりづらいものです。間違えた判断をすると離婚後の生活に経済的な影響を受け続ける可能性もあります。
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