熟年離婚の原因と問題、考えるべきことについて弁護士が解説 | 離婚に強い岡山の弁護士なら西村綜合法律事務所

熟年離婚の原因と問題、考えるべきことについて弁護士が解説

「残りの人生をもっと自由に生きてみたい…」人生50代や60代ともなれば、子どもも手から離れる年齢です。これからは自分のことだけを考えて、もっと自由に生きてみたい、そんな考えになる方がたくさんいらっしゃいます。

そこで出てくるのが、「熟年離婚」という選択肢です。しかし、熟年離婚ともなると様々な問題にぶつかることになります。財産分与の問題、住まいの問題、生活費の問題と、婚姻生活が長ければ長いほど、離婚は簡単な話ではなくなってくるのです。

そこで今回は、熟年離婚について解説していこうと思います。

 

 

熟年離婚の主な原因

まず、どういった原因から50代や60代での離婚を考えるのでしょうか?

子どもの独立

50代や60代は、子どもが成人したり、独り立ちしたりなど、子育てが落ち着く年代です。

これまで、子どものために過ごしてきた時間を、これからは自分のために充てることも十分可能となります。また、中には子どもが手から離れることで、「配偶者と一緒に過ごす理由がわからなくなった」と感じる方も多いようです。

子育てという共通の目標がなくなってしまうと、どうしても冷静になってしまうものです。

人生の折り返し地点

50代や60代ともなると人生の折り返し地点といっても過言ではありません。これまでと違う人生を歩んでみたいと感じるのには、十分すぎるほどのきっかけです。

この先の人生を、配偶者のためだけに働く、配偶者のためだけに家事をする、こういった生活を続けることに苦痛を感じてしまいます。

相手が定年退職する・定年退職間近となる

50代や60代ともなれば、定年退職・定年退職間近となります。

また、すでに早期退職している方がいてもおかしくはない年代です。一般的な家庭と言われる、夫がサラリーマンとして外で働き、妻が専業主婦、もしくはパートをしながら家計を維持していた場合、定年退職によって生活習慣が一気に変わることになります。

家事はまかせっきり、仕事もなく、好きなことだけをしている夫に対して不快感を抱く妻は多いようです。また、オシャレをしなくなった妻と長時間過ごすことを苦痛に感じる夫も多いようです。

熟年離婚のメリット~離婚で得られるものって?~

もうこれ以上の我慢をしなくて良くなる

長年の結婚生活の中で、相手に対して不満やストレスを抱えながらも、子供のためや経済的な理由で離婚を我慢してきた方も多いでしょう。

しかし、子供が独立し、自分の人生を自由に選択できるようになった今、我慢を続ける必要はありません。

熟年離婚をすることで、夫婦関係のストレスから解放され、心から穏やかな生活を送ることができるようになります。これまで抱えていた精神的な負担がなくなり、新たな人生を前向きに歩むきっかけになるでしょう。

時間やお金を自由に使えるようになる

結婚生活では、家族のために時間やお金を使うことが優先され、自分の趣味ややりたいことに使える余裕がなかったという方も多いのではないでしょうか。

離婚をすることで、これまで配偶者に合わせていた時間をすべて自分のために使えるようになります。また、財産分与によって資産を得られる場合、それを自分の好きなことに活用できるため、老後の生活設計も自由に考えることができます。

たとえば、新しい趣味を始めたり、旅行に出かけたり、思い切って新しい仕事に挑戦したりと、今までとは違う人生の選択肢が広がるのが熟年離婚のメリットの一つです。

義両親との関係から解放される

結婚生活では、配偶者だけでなく、その家族との関係にも悩まされることが多くあります。特に、義両親との関係にストレスを感じていた場合、離婚によってその関係から解放されるのは大きなメリットです。

義両親の介護問題や、親戚付き合いに気を遣う必要がなくなり、自分の生活に集中できるようになります。特に、夫側の家族と同居していた場合や、介護を担っていた場合には、離婚後の生活が大きく変わることでしょう。

離婚によって、精神的な負担から解放され、より自分らしい生活を送ることができるようになります。

熟年離婚では何を準備・対策すれば良い?

熟年離婚の特徴としては、しっかりと事前準備をしないと、その後の自身の生活をまともに送れないなんてことにもなりかねません。特に、住まいと生活費については、事前に準備した上で離婚を切り出しましょう。

離婚後の住まいを決める

離婚時の住まいの選択肢としては、以下の3つのパターンが想定されます。

  • ①夫が家を出る
  • ②妻が家を出る
  • ③どちらも家を出る(売却する)

いずれのパターンも、これまでの生活を根底から覆すことになるため、相手が応じてくれないケースが多くなっています。となれば、自ら家を出るというのが、選択肢としては選ばれやすい傾向にあります。離婚後の住まいについては事前に準備しておくようにしましょう。

離婚後の生活費等を計算する

離婚後の生活費等については、家を出る前にしっかりと計算しておきましょう。

毎月どの程度の収支が見込まれるのか、何年後まで問題なく生活ができる貯蓄があるのかといったように、離婚後の生活に不安を抱かないよう綿密な計画を立ててください。でなければ、せっかく離婚して新しい人生を歩むというのに、前途多難な日々となってしまいます。

自身の余生にどの程度の生活費等が必要か、必ず計算しましょう。

離婚後の生活費等の工面方法を明確にする

もし、離婚後の生活費等が足りないのであれば、工面する方法を明確にしましょう。

これまでの人生の中で、資格などを取得しているのであれば、それを活かして収入を得ても良いですし、これから新しい資格を取得してみるのも良い選択と言えます。

また、離婚時に配偶者から扶養的財産分与といって、自立支援の名目で2~3年程度の生活費を支払ってもらうといったケースは、熟年離婚ではめずらしくはありません。

特に、女性側は経済的に苦労することも多いため、離婚後の生活費をどのようにして工面するかについては、事前に準備した上で離婚へと臨みましょう。

 

熟年離婚時にぶつかる問題

熟年離婚をする際は、財産分与と年金分割については必ずぶつかる問題です。特に財産分与については、婚姻期間が長いだけに築いた財産も多く、単純に現金だけで2分割できないケースがほとんどです。不利益を被らないためにも、弁護士への相談をおすすめします。

財産分与

離婚時に財産分与の対象となるのは、主に以下の財産です。

  • ①現金・預貯金
  • ②不動産
  • ③自動車
  • ④生命保険金
  • ⑤有価証券・投資信託
  • ⑥退職金
  • ⑦その他の高額財産

婚姻中に築いた財産であれば、どちら名義であるかは関係ありません。もっともわかりやすい方法としては、すべて現金化してしまうことですが、中には簡単に現金化できない財産もあるため、評価額を算定するなど、可能な限り正確な金額を出しましょう。

なお、退職金については、退職前であっても、近い将来に支払われることがわかっているのであれば、財産分与の対象にすることが可能です。

また、離婚時の財産分与は原則として2分の1ずつとなっています。どちらの稼ぎが多かったといったことは一切関係ありませんので、覚えておくようにしてください。

年金分割

国民年金については、離婚に関係なく支払われるので問題ありませんが、厚生年金(共済年金)については年金分割の必要があります。

将来、厚生年金を受け取れるのは被保険者のみとなっています。夫婦のどちらか一方が働き、もう一方が家事などで家庭を維持していたのであれば、家に残っていた側は厚生年金を受け取ることができません。そこで、年金分割の手続きを行い、婚姻期間中に厚生年金に加入していた際の納付記録を2分の1に分割する必要があります。年金分割の請求には期限が定められていて、原則として離婚した日から2年間となっているので注意しましょう。

なお、年金分割は、夫婦が加入している年金によって利用できる制度が異なりますので、お近くの年金事務所、もしくは弁護士に相談することをおすすめします。

年金分割でいくら貰えるのか?分割方法やケース別の注意点などはこちらのページで詳しく解説しておりますのでぜひご覧ください。

熟年離婚を弁護士に相談するべき理由

不利な条件での離婚にならないようにサポートを受けられる

熟年離婚では、財産分与や年金分割、住まいの確保など、多くの重要な決定事項があります。しかし、離婚の話し合いは感情的になりやすく、冷静な判断が難しくなることが少なくありません。その結果、本来得られるはずの財産分与を十分に受け取れなかったり、不利な条件で離婚を承諾してしまったりするケースもあります。
弁護士に相談することで、法律に基づいた適正な財産分与や年金分割が行われるようサポートを受けることができます。特に、退職金や不動産の扱いについては専門的な知識が必要なため、弁護士のアドバイスが不可欠です。

相手との交渉を一任できる

長年連れ添った配偶者との離婚交渉は、精神的に大きな負担を伴います。お互いに感情的になってしまい、話し合いがまとまらず、離婚協議が長引くことも珍しくありません。
弁護士が代理人として交渉を行うことで、当事者同士の直接的なやり取りを避けることができます。冷静かつ適切な交渉を進めることができるため、離婚の話し合いが円滑に進む可能性が高まります。また、財産分与や年金分割といった具体的な条件についても、弁護士が法的な観点から最適な提案を行うことができます。

公正証書等の作成を依頼できる

離婚時に取り決めた内容は、後々のトラブルを防ぐためにも、文書として正式に残しておくことが重要です。特に、財産分与や年金分割、養育費の支払いなどについては、公正証書を作成することで、支払いが滞った場合に強制執行が可能になります。
弁護士に依頼すれば、公正証書の作成をサポートしてもらえるため、将来的なリスクを最小限に抑えることができます。特に、配偶者が約束を守らない可能性がある場合には、公正証書を作成しておくことを強くおすすめします。

離婚調停や離婚裁判になっても対応を依頼できる

話し合いで離婚が成立しない場合、家庭裁判所での離婚調停や、さらに裁判に発展することもあります。調停や裁判では、法律的な主張や証拠の準備が必要になるため、弁護士のサポートが不可欠です。
弁護士に依頼すれば、離婚調停の申立書や裁判での主張内容の準備を任せることができるため、ご相談者様の負担を大きく軽減できます。また、相手側が弁護士をつけている場合には、こちらも弁護士を依頼し、対等な立場で臨むことが重要です。

熟年離婚でお悩みの方は弁護士にご相談ください

熟年離婚は決して悪いことではありません。これまでの人生を振り返り、これからの人生を新しいものにしたい、豊かにしたいと感じるのが、50代という年齢です。しかし、婚姻生活が長い夫婦の離婚には様々な問題がついてまわります。特に財産分与や住まいについては揉めるケースも多く、話し合いが長引く可能性が高いです。

新しい人生を歩み出したいのに、いつまでも離婚問題が長引いていたら精神面の負担は多大なものとなります。そこで、ご自身での解決が難しいと感じたら、弁護士に相談してみるのが良いでしょう。弁護士であれば、夫婦の間に入って話し合いをすることはもちろん、あなたの代理として離婚協議を進めることも可能です。弁護士介入後は、基本的に報告を待っていれば良いため、精神面の負担も軽減されます。

もし、熟年離婚でお悩みの方がいらっしゃれば、ぜひ一度当事務所にご相談ください。

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